「国酒」と呼ぶことに賛成は六三%

 「国酒」という言葉をご存知であろうか。この言葉は大平正芳元首相が外相時代に訪中した際に、茅台酒でもてなされたことに感銘を受けて、首相就任後に公式行事に日本酒を使うことを決めて、国酒という言葉を考え出したという。そして今年の四月、古川国家戦略相が「日本酒と焼酎はコメと良質な水という日本が誇るべき産物から生まれた文化であり、輸出産業として世界を席巻できる可能性を秘めている」と述べ、日本酒と焼酎を国酒と位置づけ、海外展開を後押しする方針を明らかにしている。施策的には異論の余地はないが、この呼び方には若干抵抗を感じる方もいるのではないだろうか。
 そこで「あなたは『国酒』という呼び方を知っていましたか」とまず質問した。「YES」が一六%で二割にも達せず、認知率はまだ低い。
 性別で見ると、「YES」は男性が二〇%と女性のほぼ倍となっている。年代別では五〇代がもっとも高くて二三%。二〇代、四〇代は約一〇%で他年代に比べ低くなっている(図表1)。
 次に「日本酒を国酒と呼ぶことに賛成ですか」と質問したところ、「YES」が六三%、「NO」が三七%で賛成派が大勢を占めた。
 性別では女性が七三%と高く、男性は五七%にとどまる。年代別では、六〇代以上は賛成派がもっとも少なく四七%にとどまっている。
 ちなみに国酒の呼び方の認知別で見ると、知っていた人のほうに賛成派が多く、九割近くに達している(図表2)。

政治臭が感じられる国酒

 国酒という呼び方に対する意見を自由に記述してもらったところ、賛成派では「ふさわしい」に属する意見が約半数を占めた。代表的な意見は以下にあげるが、日本の国の酒ということに素直に共感する意見が多くなっている。
「とても良いと思う。日本独自のお酒なので、日本人としては『国酒』という呼び方は当たり前なのだろう。相撲や柔道も『国技』と言うし、それと同じだと思う」(女性三〇代)
「国を代表する酒類を決めるのはおもしろいと思う。自分が海外に旅行した時もその国の『国酒』を飲みたい。国歌のように定着してほしい」(男性三〇代)
「日本には春夏秋冬に対応して『甘酒』『黒酒(灰持酒)』『濁酒(どぶろく)』『清酒』とあったが、清酒だけが日本酒と呼ばれるようになったため、あらためて日本の酒全体を『国酒』と呼ぶと良いと思います」(男性五〇代)
「歴史を感じることができ、荘厳な感じがします」(女性二〇代)
 一方、反対派では「抵抗がある」、「日本酒のほうがよい」、「センスない」などの意見があがった。
「日本酒も焼酎も好きですし、世界に誇れる日本の文化だとは思いますが、『国酒』という呼び名は、政治的な匂いが強く、好きではありません」(男性四〇代)
「偏狭なナショナリズムに利用されないことを祈ります」(女性四〇代)
「国策で税金を取るための酒みたいに聞こえてすごくいやです」(男性五〇代)
「醸造酒の材料がお米と言うのは、東南アジアでは他の地域にもあります。日本独特のものではないのではないか」(男性六〇代以上)
「日本酒という名前のほうが音感も良いし、国名が入っているので日本のものだとイメージを持ちやすい」(男性二〇代)
「日本酒は我が国中心でつくっているので間違いなく国酒だとは思いますが、海外では『SAKE』で通じる。あえて国酒と呼ばなくてもいい。『酒』『日本酒』で結構」(男性四〇代)
「ちょっと堅苦しいネーミングだと思います。もう少しソフトなネーミングのほうがいい」(男性五〇代)
「日本のお酒という意味ではいいが、慣れないせいか使いにくい」(女性二〇代)

料理とセットが普及の王道か

 最後に「日本酒や焼酎が海外でも人気が出始めていますが、これからどうしたらもっと人気が出ると思いますか」と聞いたところ、「料理とセットで紹介」がもっとも多く、「広告宣伝を多く」、「品質向上・改良」などが続く。
●料理とセットで紹介
「和食はもちろんのこと、各国の料理にも合うお酒であることをもっと紹介すべきである。日本酒に合う日本料理の作り方等のレシピなども海外に紹介して日本食も文化も紹介していくべき」(男性六〇代以上)
「海外の日本食レストランは韓国系や中国系の方々がやっている場合が多く、日本酒,焼酎と組み合わせた和の魅力をきちんと伝えられているかは疑問。正しく修行をした日本人が海外に行き、和の魅力を伝える行為が重要になる」(男性三〇代)
「既に海外で人気が出ている寿司等の日本の食事と、それに合う日本酒とセットで広めることが人気につながると思う」(男性五〇代)
●広告宣伝を多く
「海外の人気歌手や俳優などを広告塔にして売り出せばいいと思います」(女性三〇代)
「私は韓国ドラマで韓国の料理やお酒に興味を持ちました。世界的に有名な日本人に出演してもらって日本酒や焼酎のCMを作ってYouTubeにアップするとかどうでしょう」(女性五〇代)
 その他、パッケージデザインなどのおもしろい意見も出されているのでいくつか紹介する。
「炭酸入りが出てきているように、海外で受け入れられるように商品の多様性を図る。一方、正統派のものは日本食の紹介とセットで政府がトップセールス」(男性五〇代)
「日本酒や焼酎のカクテル等新しい飲み方を提供していくといいと思う」(男性二〇代)
「ウイスキーのように炭酸&ライムで割ったらおいしいので、それに合う酒の開発だと思います」(女性三〇代)
「海外では日本のアニメや漫画がブームなので、お酒のパッケージもアニメにしては?」(女性二〇代)
「パッケージのロゴを習字の漢字を使ったものにしたり、日本的な風景をデザインすれば良いと思う」(女性五〇代)           ■

2012年04月実施