ひやおろしをもう飲んだ人は2割弱


 ひやおろしとは春までに醸造した日本酒を火入れした後に半年以上熟成させて飲みごろになったお酒。秋だけに出荷される日本酒の代表格である。円熟の味わいが感じられ、日本酒のおいしいシーズンの始まりを告げる“さけ”でもあるので、ボジョレヌーボーのように季節のお酒として定着、育成していきたいものである。
 まずは、日本酒に限らず、ビールや焼酎など「季節限定のお酒は好きですか」と質問してみると、「YES」が60%、「NO」はわずか3%、「特に意識しない」が37%であった(図表1)。やはり旬のもの好きというのは酒にも広く適用されるということがわかる。
 そこで発売から間もない9月下旬に、「今年のひやおろしを飲みましたか?」と問いかけたところ、「YES」は19%であった。年代別では60代以上(29%)がもっとも高く、30代(25%)が続くが、性差はみられない。飲用頻度別では当然のことながらヘビーユーザーほど高い(図表2)。ひやおろしを買った(飲んだ)店は酒販店がトップで6割を占め、「飲食店」は2割強に過ぎない。店頭で見かけたり、店の人にすすめられて購入したというケースが多いようで、家庭での飲用がメインになっている。
 まだ人数は少なかったが、ひやおろしを買った(飲んだ)人に理由を聞いたところ、「おいしい」、「店ですすめられて」、「時期ものだから」、「毎年恒例」、「おいしそうにみえる」などの意見に集約される。ひやおろしをすでに知っている人にはシーズンものとして定着していて、毎年味わっていることもうかがえる(図表3)。
「いつものなじみの日本酒だが、この季節のひやおろしは格段においしく感じる。だから、いつも迷わずに購入する」(男性60代以上)
「今年も出たかと季節を感じるので毎年飲んでいる」(男性60代以上)
「秋になったので奮発して松茸を買いました。それにあうおいしい日本酒をと思いデパートでひやおろしを買いました」(女性60代以上)
「この時期だけのものなので飲みたくなる」(女性20代)
「毎年の恒例になっています」(男性40代)
 また、今年初めての飲用者は次の意見のように、店の推奨がきっかけになっていることが多く、販促効果の良い事例になっている。
「専門店で男性が試飲させてくれ、すすめられたので」(女性30代)
「信頼しているお店の人のおすすめ品だったから」(女性50代)
「飲食店のおすすめリストにのっていたから」(男性50代)

季節感を打ち出せる酒は強い

 最後に日本酒に限らず季節限定で発売される酒類(ビール・日本酒・ワインなど)を好むという人にその理由や印象を自由にあげてもらうと、回答者の三分の一は「季節感」を感じることがうれしいと答えている。さすが四季折々の変化を愛でる日本人ならではの感性なのか、いっときにしか感じられないものを支持する趣向性が強い。その他の理由では「おいしい」、「その時期にしか味わえない」、「好ましい」などに分類できた(図表4)。
●季節感
「季節を感じられるのがうれしいです。食欲の秋なので。おいしいお酒を満喫したいと思います」(女性30代)
「季節の初めと終わりにみんなで集まって飲むので、季節感がいいのと、話題にもなるので大変良い商品」(女性20代)
「各ビール会社のラベルに紅葉など秋バージョンの色・絵が印刷された秋の季節限定のビールが並んでいて、つい買ってしまいます」(女性60代以上)
「その時期による味わいの違いはもちろん、季節の訪れを知らせてくれるのがよい」(男性20代)
「その季節の喉越し加減がたまらないです。通年商品にはない魅力があります」(男性30代)
「季節限定のお酒は濃厚な味わいのものが多く、濃厚好きの自分にはとてもうれしいことが多いのです」(女性50代)
「季節感を強く感じることができ、また旬の味わいを実感できるので大好きである」(男性50代)
●おいしい
「さすがに研究されていて気温や湿度に応じたおいしいと感じる商品が出ていると思います」(女性50代)
「限定品だけあって貴重なイメージがあり、おいしいと感じる」(男性40代)
●その時期にしか味わえない
「その時期しか飲めないものなので魅力的に感じる。ラベルの色とかデザインに季節感があると、より買いたくなる」(女性20代)
「その時にしか飲めない味はできるだけ飲みたいと思います」(男性50代)
●好ましい
「目新しくて好き」(女性30代)
「その時々で変わったものを楽しめる感じなのが良いですね」(男性30代)
 季節感や旬を酒からも感じとる、その時期しか味わえないという限定性は飲むことが特別なワクワク感をもたらしている。四季が明瞭である日本ならではの風情も加わり、飲む楽しさを増加させてくれる。つけ加えれば季節商品は味、品質は無論ながらパッケージやネーミングなどで、目で見て季節の訪れをわからせてくれるのがよい。むずかしい理屈よりも一目瞭然の商品コンセプトがシーズン酒ヒットのポイントであろう。              ■

2012年10月実施