酔いたくはないが雰囲気は欲しい

 ノンアルコールビールが今年の夏も販売好調である。これは飲物としておいしいということと、運転などアルコールを摂ってはいけないシーンの順守が進んできたということの両方の影響と考えてよいのだろう。一方で、普通のチューハイよりもアルコールの弱い3%のチューハイも、同じように数量が増えている。こちらは、飲んではいけないという場面では使えない。だから酒飲みが軽い酔いでとどめようとして場面に応じて選ぶ場合と、もともとは飲まない(飲めない)人がこれくらいならばと飲んでいる場合の両方が想像できるが、現状はどのような感じになっているのだろうか。
 「アルコール3%台のチューハイやカクテルを飲んだことはありますか」の質問に「YES(継続的に飲んでいる)」13%、「YES(飲んだことはある)」57%で、回答者の70%が飲用経験をもっていた。飲用経験者は男性のほうが比率が高いが、飲用継続者ということでみると女性のほうが高く、5割を超えている。年代別でみると飲用継続は30代(36%)がもっとも高く、年代が高まるほど飲用継続、飲用経験の比率が低下していく。20代は飲用経験は高いが、継続率はさほど高くない。飲酒頻度別ではミドル、ライトユーザーに継続飲用者が多いようだ。低アルコールのチューハイ・カクテルが30代女性・ときどき飲む人に支持されているのがうかがえる(図表1)。
 「あなたは3%台の酒で酔いを感じますか」と聞いてみると、「YES(ちょうどよい加減)」が32%、「NO(酒としてはものたりない)」が68%で、約7割の人が酔いという点ではものたりなさを感じている。しかし性別でみると女性の4割、年代別では20〜30代の4〜5割が「ちょうどよい加減」の酔いと感じている。当然のことながら飲用頻度が低い人ほど「ちょうどよい加減」が多い。また、3%の酒の飲用継続者では5割強が満足している。一般的にいうお酒のライトユーザーが低アルコールでも適度な酔いを感じ、低アルコールのチューハイ・カクテルのユーザーの核として育つ可能性が十分あるようだ(図表2)。

深酔い防止、ほろ酔いの酒

 3%の酒を飲む理由を聞いたところ、「深酔いしない・軽く飲みたい」がもっとも多い。
 中でも飲用継続者ではこの「深酔いしない・軽く飲みたい」と答えた人が5割おり、その代表的な意見は次のとおり。
「次の日早起きしなくてはいけない時に飲む。深酒防止です」(女性30代)
「あまり酔いすぎず、ほろ酔い加減でいいときに飲んでいます」(女性40代)
「心地よい酔いが感じられる。また、いろんな種類のお酒が楽しめるのも魅力」(男性30代)
 上記の彼らは3%の酒でもちょうどよい加減の酔いに満足しているが、酔いが不足と感じながらも飲み続けている人の意見は次のとおり。TPOにあわせ、飲み分けているのがわかる。
「早朝の仕事が多いので普段は軽めのお酒がちょうどよいです。ただ日本酒好きの私としてはやはりこれではものたりないのも事実」(男性40代)
「昼間から一杯やる時にはよい」(男性50代)
 「おいしい・好みの味が豊富」と答えた中では、「軽くて飲みやすい。好みの味のお酒が多いし、主人も一緒によく飲む」(女性30代)、「缶のデザインをよく見ると気になる味が多い」(女性20代)等々、チューハイ・カクテルならではの味の多様さが理由にあげられている(図表3)。
 一方、飲んだことはあるが継続飲用していない層でも「深酔いしない・軽く飲みたい」で、適度な酔いを求める声が目立つ。
「小さい子供がいるのであまり酔いすぎないようにするためです。独身の頃より酒に弱くなったせいもあります」(女性20代)
「軽く飲みたい時に一缶あけます」(女性30代)
「ノンアルコールではつまらないし、5%以上だと強すぎるから…3%はベスト」(女性20代)

目新しさが魅力だが、定番化は?

 そのほかの選択理由は、「試しに飲んだ」、「アルコールが弱いから」、「たまたま買った・飲んだ」などがある。
「新しい味の商品を試したい時。3%でカルピス味やピーチの味のお酒は飲みたい時があります。家で飲むときはそこにウィスキーや焼酎を加える場合も」(女性30代)
「発売当初、どんなものなのか知りたくて飲んだ」(男性40代)
「お酒は苦手であまり飲めませんが、飲んで騒ぎたいときもあります。そんなときに3%のものだとほどよく酔えるので嬉しいです」(女性20代)
「あまり強いほうではないが、これくらいのアルコールなら長い時間一緒に飲める」(女性40代)
 低アルコールのチューハイ・カクテルは、お酒があまり強くないライトユーザーにとっては、ほろ酔い気分を味わわせる魅力的なポジションにある。しかし、ミドル以上のユーザーにとっては目新しい、試し買い商品になっても定番化せず、シチュエーションによって飲み分けするための補完アイテムとしてのポジションでしかなさそうだ。そもそもあまり飲まないという層がメインの対象であるから、定番商品としての定着にはさらなる工夫が求められそうである。

2012年08月実施