本格焼酎―世評が流行を牽引

 酒の流行の変遷を見ていると世評を反映していることが多いことに気づく。長い間日本酒は、不景気のときには甘口、好景気のときには辛口と言われてきた。この意味は不景気のときには時間も持て余す、また酒の肴も不自由になる、だから飲み応えのある酒に人気が集まるということなのだろう。好景気のときには忙しくて飲む時間も短くなるから、短時間でスイスイと飲める酒がよいということだったのではないだろうか。
 その伝で行くと、現在流行している本格焼酎はどちらに属するのであろうか。日本酒と比較すれば明らかに辛口の酒であるが、ウイスキーと比較するなら甘口の酒と考えられる。また焼酎全般は淡麗辛口と言えなくもないが、一番人気のある芋焼酎やブームの兆しのある黒糖焼酎は焼酎の中では甘口と考えて差し支えない。
 ところで、消費者は本当に焼酎が飲みたいのであろうか。なぜならば、本格焼酎の販売量が急激に伸び始めたのは、焼酎が脳血栓の予防効果があると情報番組で繰り返し取り上げられてからだ。言い換えれば、健康的な酒として多くの人々が焼酎に飛びついたにすぎないともいえる。ほかの食品でもテレビで同様に取り上げられた後は、主婦がスーパーに列をなして買い求めて一時的に品切れになったものも多い。
 しかし、焼酎の場合には、各種のブランドがあり、一過性のブームではなく継続して飲まれている。それでもメーカー希望小売価格では2千円ちょっとの一部の銘柄が、2万円以上の価格で量販店で売られているという姿は尋常ではない。そこにはなにかただならない力、流行もの・著名なものはいち早く自分も体験したいという現代の消費者ニーズの怨念のようなものさえ感じてしまう。

2004年03月09日掲載