自由の国アメリカの規制

 常々、アメリカで日本酒人気が高まってきていると書いているが、これは東西両海岸に限った話で、しかもNY、もしくはロス、サンフランシスコといった大都市のことなのである。もちろんシカゴという例外もあるのだけれど、内陸部の州、特に人口の少ない州ではまだまだ日本酒は浸透していないのが現実だ。これはある意味当然なことなのだけれど、日本酒の浸透度は、実は卸売業者の手にかかっているといっても過言ではない。本当に「ネック」は卸売業者なのだ。
 アメリカの物流システムには三段階ある。生産者(もしくは輸入業者)、卸売業者、小売商(もしくは飲食店)である。日本では、他県で売っている酒が欲しければ個人でも生産者に連絡して酒を売ってもらうことが可能だ。それから卸売業者が小売りをすることもできる。だから僕のような個人であっても大きな卸売業者に出向いていけばだいたいどんな酒も入手することができる。ところがアメリカではこうはいかない。
 アメリカにはアルコールの販売規制がたくさんあるのだ。まず、_掲箒伴圓肋売りを行ってはならず、小売店もしくは飲食店のみに販売を行うことができ、⊇F發垢戮討離▲襯魁璽覦料はその州の卸売業者を介さねばならず(これに関しては例外もあるが)、まさにこの二つが、人口の少ない州への日本酒の浸透を妨げ、難しくしているのだ。
 まず、卸売業者は小売りができないから1、2本や一箱程度のストックを抱えようとは思わない。保管場所や面倒な手続きを考えると、何ケースもばんばん売れるものだけを扱いたいと思う。だから小売商が「日本酒を売ってみたい」と言ってきても、たくさんは売ることができないと思えば取り扱うことを渋る。
 次に、すべてのアルコール飲料は州内の卸売業者を介さなければならない故に、卸売業者が日本酒を扱わない限り、その州の消費者は日本酒を買うことができない。州は酒税を小売商からではなく、卸売業者から徴収している。だから小売商や飲食店が他の州の卸売業者から買ってもいいということにしてしまうと、他の州が税金をさらってしまうことになる。そしてそんな殺生なと思っても、税金に関することだから法律はそう簡単には変わらない。西海岸ではこれに値しない州もあるが、殆どの州で状況はこうなっている。
 実際ここ二年ほどの間に、この法律を相手に訴訟を起こしたケースが2件ほどあった。他の州の卸売業者から出荷できないのは、州間貿易の障害で、個々の州が商業を守り導くことを保障している合衆国憲法に背いているというのだ。これはもちろん正論であり、将来的にこの方向へ事が変化していくことになるかもしれないのだけれど、法律は今すぐには変わらない。州も、実権を握っている卸売業者も急速な変化を望まないだろう。なにせ今のままで彼らは莫大な収益をあげているのだから。
 ひとつ希望的観測をあげるとするなら、サザンワイン&スピリッツのような大きな卸売企業が、時間をかけてでもすべての州に手を伸ばし、販売網を手に入れることだ。そしてことによれば、こういった企業が人口の少ない州でも、人口の多い州で売れているものを扱うようにしてくれるかもしれない。これからどうなっていくのか、日本酒がどう全米で広まってくのか。僕は人口の少ない州においても日本酒の需要はいずれ高まると信じている。その発展を見守りたい。
(ジョン・ゴントナー:日本酒ジャーナリスト)

月刊 酒文化2005年07月号掲載