ブルックリンに、生ビールを売るドラッグストアがオープンしたというので、見物に行ってきた。ウィリアムズバーグという、ユダヤ人やイタリア系住民が多く住んでいる地域で、ブルワリーの数も多い。御当地ビール「ブルックリン・ラガー」の製造工場も目と鼻の先にある。
ちなみに、この辺りで育った人は、ブルックリンのRを発音せずに“ブックリン”と呼ぶ(マンハッタンも、Tを外して“マンハッン”と発音できるようになったら、あなたもプロのニューヨーカーと思われるだろう)。西海岸や中西部の人々が、「あなたの英語は、ニューヨーク訛りがある」と言う場合、大概はブルックリン訛りをさしている。ニューヨークに住む人々の、三人のうち二人が外国生まれだと言われているが、ここに何代も住んでいるチャキチャキのブルックリン子は、完了形を使わないのですぐにわかる。彼らは、過去に起きたことはすべて過去形で表現する。だから「日本ニ行ッタコトハアルノ?」ではなく、「日本ニ行ッタ?」と聞いてくる。
本題に戻ろう。話題のデュエンリードは、都市圏でナンバーワンのシェアを持つチェーンである。昨年は、生寿司やサンドイッチやサラダを売り出して注目を浴びた。いまやドラッグストアで弁当を売る時代になったのだ。特に、コンビニの少ないマンハッタンでは、デュエンリードがその役目を担っている。
昨年暮れに開店したその店は、ベッドフォード駅の商店街の外れにある。近くに住むアーティストが描いたのか、大胆なストリートアートが道行く人の歩を止める。回りには「YES」という名前のデリや、「水」や「スシ・タンゴ」という名の怪し気な日本料理店が軒を連ねている。独特な雰囲気のある町だ。
店に入った途端、「チラー(冷蔵庫)」と書かれた大きなウォークインのビールルームに目を奪われた。扉の左手に設けられたバーには、生ビールのタップと、詰替え用のボトルがずらりと並んでいる。冷蔵室の中には、ブルックリン・ラガーを始め、昨年新発売になった「ローカル」や、その他の人気地ビールや輸入ビールが陳列されている。生ビールは、8種類販売されていて、試飲は可能だが、店頭で飲むことは禁じられている。客は、64オンス入りの容器(3.99ドル)に、生ビール(7.99ドル)を注いでもらい、それを家に持ち帰って飲む。嬉しいのは、24時間営業だということだ。
聞けば、チェーン嫌いで有名な同地域に出店しようとしたところ、住人の猛反対にあい、何とか受け入れてもらおうと生ビールバーを思いついたらしい。苦肉の策とはいえ、なかなか乙なアイデアである。(たんのあけみ:ニューヨーク在住)
