駐在生活の楽しみ

 南半球に位置する南アフリカはちょうど今、冬の季節です。アフリカと言えば一年中灼熱の太陽が照り付けるイメージを持たれるかもしれませんが、冬は予想以上に冷え込みます。中でもヨハネスブルグは一七〇〇mの高地にあるため朝晩は零度近くまで気温が下がります。それでも日差しのある日中は二〇度前後まで上がります。夏の気温は二六度前後で、そのうえ乾燥しているため日本のような蒸し暑さはありません。ほぼ一年中を通して温暖な過ごしやすい気候となっています。
 このような気候を生かして、肉、野菜、果物などが豊富に生産されており、駐在生活では様々な食材を楽しむことができます。グレープフルーツ、干しぶどう、とうもろこし、落花生、ロブスター、あわびなどは日本にも多く輸出しています。
 高級食材店ではヨーロッパを中心とした外国産の食材も比較的簡単に手に入れることができます。中華食材店には、米、味噌、納豆、豆腐などをはじめ日本食材もあります。
 日本食レストランもあり、日本酒、焼酎も売られています。焼酎九〇〇mlのボトルは一本約八〇〇〇円、枡酒は一杯約八〇〇円と超高級品として出されています。日本人の寿司職人がいるレストランもあり、本格的な寿司や刺身も堪能できます。
 また、「SUSHI」は日本食レストランに限らず地元のレストランでも人気のメニューで、鮪とアボカドを巻いたカリフォルニアロール、鮭とアボカドを巻いたレインボーロールなどFashion Sushiと呼ばれる巻寿司もあり、種類も盛りだくさんです。回転SUSHIもあります。
 南アフリカには、自動車関連のメーカーや商社をはじめとする約七〇社の日系企業が進出しています。駐在員やその家族を含めた在留邦人は一〇〇〇人ほどいます。ヨハネスブルグには日本人学校もあります。
 生活面で駐在員を最も悩ませるのが「治安」の問題です。日頃から細心の注意をはらい安全確保に努めています。住宅塀の上部には有刺鉄線を張り巡らせ、集合住宅の多くは入口に警備員を配置しています。武装強盗や車両尾行による犯罪を防ぐため、自宅には防犯アラーム、鉄格子、車両には強化ガラス、追跡センサーを設置します。
 治安に気を張っている駐在員も、休日はリラックスして精気を養います。テニス、ゴルフ、野球、サッカーなどのスポーツや、映画・音楽鑑賞などアクティビティには事欠きません。「ブライ」と呼ばれるバーベキューも楽しみのひとつです。ブライでは気の合う仲間が集まり、ビールやワインを片手にゆっくりと午後を過ごします。まとまった休みがあると郊外まで足を伸ばし、サファリを楽しむこともできます。
 駐在員の多くが生活するサントン地区には、近代的なショッピングモールやホテル、オフィスビル等が林立し、時々、アフリカに居ることを忘れてしまいそうになります。
 しかし、南アフリカの所得格差は非常に大きく、「このような環境を享受できているのはほんの一握りの国民だけである」という問題意識を常に持っていたいものです。
(たかざきさわか・ヨハネスブルグ在住)

月刊 酒文化2008年09月号掲載