ブルックリン・ワインフェスタ

 最近「イベントブライト」という催しもののチケット販売サイトで、おもしろいプログラムを見つけた。ミュージック、フィルム、フード、ドリンクといったカテゴリーの中に、お酒に関するイベントがたくさん。例えば「ブラッディマリ―・フェスティバル」、「NYCベーコンとビールクラシック」、ヤンキースタジアムで開かれる「ブロンクス・ビールフェスティバル」などだ。
 大規模なコンベンションセンターではなくコミュニティーセンターで開催されるローカル色の濃いイベントも多い。二月八日に出かけてみた「ブルックリン・ワインフェスタ」は、地元住民向けのワイン祭りといった雰囲気だった。参加料は五〇ドル。早い時期だとさらに一〇ドルの割引があるようだ。午後と夜に分けた二回の開催だが、ワインを飲むなら夜にしたいと思い、午後六時から九時半までの部に申し込んだ。
 開催場所はヒップなエリアと若者に人気のウィリアムズバーグから、二〇分ほど歩いたブルックリンエキスポセンター。ガラス越しに見る内部はすでに第一部が終わっていた。第二部のスタンバイ中のワインセラーたちが、それぞれのブースで待ち構えている。ほどなくして入場時間。二一歳以上であることを示す身分証明書を提示した来場者は、リストバンドとワイングラスを受け取り、中へとなだれ込んでいく。
 借り物競争よろしく、まずどこへ行こうと急いであたりを見渡す。すると見たこともないようなブルーカラーのワインを発見。その名も「アムールジュネーブ」。愛のジュネーブ? 吸い寄せられるように近づき早速一杯グラスに注いでもらう。さわやかな香りとともにブルーの液体が喉元を落ちていく。苦みもなく実に軽やかな風味である。ブルーのワインは珍しい。スペインの地中海地方アリカンテのベルデボ種をベースに、イタリア・ピエモンテのネッビオーロ種を用い、オリジナルの技法でつくられたものだという。この見た目も美しいターコイズブルーのワインボトルはギフトにお勧めだ。
 他にはニューヨーク州フィンガーレイク地方のワインWEIS。オーナーはドイツのワイナリーの生まれだそうだ。赤、白、セミドライなど八種類を取り揃えている。フランス北部のノルマンディーにあるロミリ―農場のシードルロゼは、少し酸味があるフルーティな味わい。ニュージャージー州のホーボーケン・ブリュワリービールや「黄泉」純米吟醸もあった。おつまみにはベルギーの前菜プレートセット、レリッシュの付け合わせなど。ポーランド産の餃子に似たピエロギは、中身がマッシュポテトとカッテージチーズでどんなお酒にも合いそうだ。
 夜が更けていくにつれ、来場者も多くなっていく。DJの操るポップな音楽が響き渡り、踊りだす人もちらほら。ワインテイスティングというより地元の酒好きが一堂に会し、ワインをワイワイ楽しむといったイベントであった。
(あおきたかこ:ニューヨーク)
2020年特別号上掲載

月刊 酒文化2020年06月号掲載