在宅で一杯! マンハッタンのリカーショップあれこれ

 今年初めから不穏な動きがあり、欧州に続くかのようにアメリカでも大規模なロックダウンが始まった。3月下旬のことである。仕事は在宅で、エンターテイメントはもとより、博物館、美術館、バー、レストランもすべて閉鎖。開いているのは薬局、スーパーマーケット、テイクアウト、デリバリーのお店。そしてリカーショップ。
 禁煙風潮のアメリカでは、その代わり(?)として酒類を求める人が多いのだろう。マンハッタンを歩けば、かなりのリカーショップが目につく。午前中からお客がカートに商品を山積みにしているのを見ると、アメリカの酒類の消費は半端じゃないのだろうと感心する。そういえばブルックリンに住む知人は、4月半ばに政府より臨時支給(1人1200ドル)を受けた直後、たくさんの人がリカーショップに直行するのを目撃したと言う。
 どんなお酒が売れているのか。ホールフーズは圧倒的にビールが多い。輸入品と地元の何百種類ものクラフトビールで陳列棚がぎっしりと埋まっている。同社にはビール部署があり、店舗には専門員も配置して、どのビールがよいかアドバイスをしてくれるらしい。確かにこれだけの銘柄から何を選べばよいかわからない。また近頃ビールはパッケージもお洒落だ。スリー・ブリューイング『VLIET』の青い海のようなデザインボトルは、容器だけでも取っておきたくなる。イラスト風の絵柄も見るだけでも楽しい。私のように味の微妙な違いがわからない者はいっそ、デザインでビールを選ぶのもありだろう。
 一方、リカーショップは、ビールをメインに扱うところもあれば、ウイスキーやワインが充実しているところもありさまざまだ。欧州だけでなく南米やアフリカのワインなど品揃えも豊富。ウイスキーではサントリーも人気で、ショーウインドーでは『六』『李』『白』のボトルがディスプレイされている。
 焼酎が豊富なミノルサケ(チェルシー地区)は一時閉めていたものの、5月に再オープンしたとの情報があり、早速行ってみた。中は相変わらず何百種類もの日本のお酒。福島の酒イベントがあったようで「FUKUSHIMA」のサインも目についた。
 見ているとあれもこれも欲しくなったが、ホールフーズでは骸骨が空軍のような恰好をしたイラストの『ニューベルジャン・インペリアルIPA』を購入。ついでに地元ブルックリンの『シックスポイント・ヘイジーIPA』も一缶ゲット。どちらも苦みばしってアロマがほのかに感じられる。2本一気に飲んだついでにミノルサケで購入した兵庫県の『IKEZO』の柚子ゼリー入りも試す。フルーティーだったがそこはお酒、ビールよりこちらのほうで酔ったかもしれない。在宅はまだ長そうだ。もう一つ購入した『白鶴 淡雪』は別の機会に取っておこう。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住) 
2020年夏号掲載

月刊 酒文化2020年10月号掲載