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日本と海外の酒めぐり
カシャーサ・ひすとりい
カシャーサ・ひすとりい  
 いまからちょうど5年前、ブラジルの国民酒であるカシャーサ(Cachaca)について本紙に寄稿した。テーマは手っ取り早く安く酔える大衆の酒と見られていたカシャーサに、熟練の職人が手づくりで醸し出す極上の酒があることを伝えることであった。これを「アーティザン・カシャーサ(Cachaca artesanal)」と呼称して、特別な国際商品になる夢を語った。今回は、国をあげての国際商品化への取り組みがどのように進められ、現在どこにいるのかを報告する。この間、私は日本へのカシャーサの個人輸出をするようになり、並行してカシャーサ国際化戦略を立案すべく UFLA大学で Tecnoligia de Cachaca de Alambiqueを学ぶことになった。本稿はその研究の一部でもあり、事実報告にとどまらず私見を加えている。これがきっかけとなり、カシャーサに関心をお持ちいただけるようになれば幸いである。

世界第三位の蒸溜酒カシャーサ
 ブラジルの地酒として知られるサトウキビの蒸溜酒は長年ピンガ(Pinga)という名称で親しまれてきた。現在でも田舎へ行けばこの言葉は聞かれるが、2000年ころを境にこの酒を世界に認知させようと、国が本腰をあげて、名称はカシャーサに統一された。
 カシャーサには現在公的には二種類が存在する。ひとつは「インダストリー・カシャーサ(Cachaca industrializada)」とよばれ、大量に工場で生産される商品であり、もうひとつは「アランビッケ・カシャーサ(Cachaca de Alambique)」と呼び、ブラジル各地に散らばる中小規模蒸溜所で蒸溜される酒を指す。
図表1 双方の違いは生産施設の大きさのみならず、酒の原料となるサトウキビの種類、収穫または調達方法、発酵過程、蒸溜器、蒸溜工程などで大きく異なる。その違いは、飲んでみれば一目瞭然だが、前者はカクテルのカイピリーニャ(caipirinha:ライムを一個使って作られるカクテル)のベースとして知られていることからも察することができるだろう。なお、後者はショットで味わう酒として売り出されている。 ここでカシャーサのおおよその製造規模を掴んでおこう。カシャーサの全生産量は、ロシアのウォッカ、韓国のソジュ(焼酒)に続いて世界第三位であり、現在、年に13億Lを生産し、主に国内で消費されている(99%)。大半はインダストリー・カシャーサが占める。輸出量は、年間11000万Lで、総生産量の1%にも満たない。主な輸出先国は、ドイツ、アメリカ、パラグァイ、ボリヴィア、ポルトガル(2009 IBRAC/ブラジル・カシャーサ研究所調べ )で、主に輸出されているのは前出のインダストリー・カシャーサとよばれる商品で、 Cachaca 51、Ypioca、 Velho barreiro などの銘柄だ。
 ただし、一方の小規模蒸溜所産品の「アランビケ・カシャーサ」が輸出に占める割合は、近年ハイペースで高まってきている。アランビケ・カシャーサの生産量が国内でトップのミナスジェライ州(以下MG州)の例で見ていきたい。
 図表1にあるとおり1996年にはゼロに近かったものが2006年には2%を超えた。 2007年のデータが表示されていないが、大幅な伸びを示しブラジル全体の輸出量の実に3.5%を超えたと言われる。

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