■本格焼酎とスピリッツ

 一時、本格焼酎をずいぶん飲んだ。鹿児島で芋焼酎があまりに洗練されていたことに驚いて、山ほど買い込んで自宅に送ったのがきっかけだった。それからは泡盛、黒糖、米、麦などにも触手をひろげて飲み比べていった。
 特におもしろいと思ったのは芋焼酎と泡盛。芋焼酎の蒸留酒と思えない豊かな旨みや、泡盛の熟度のある香りがおもしろかった。麦焼酎は飲みやすいので、何本あってもたいてい最初になくなる。米焼酎はまだ修行が足りず、「これが米焼酎だ」という特徴がよくわからない。黒糖焼酎はラムと兄弟みたいな酒だが、日本的な粘度のある舌触りや麹の味わいと、ラムのような余韻が南国を思わせる。ひとつ馴染めないでいるのは、樫樽で貯蔵した焼酎。商品によって当たり外れが大きくて、「ウイスキーの方が安くてうまい」と思うことが多かった。樽を使った蒸留酒の熟成やブレンドの技術は、まだウイスキーが一歩も二歩も上だと思う。
 最近はスピリッツをいろいろと飲んでみたいと思っている。丁寧なつくりのジンやテキーラやラムなどが日本に入ってくるようになって、飲みやすいだけの酒ではなくなってきたからだ。
 本格焼酎とスピリッツやウイスキーとでは、消費量の差ほどにポテンシャルの差はない。いろいろな蒸留酒と並列に眺めることで、本格焼酎がもっとはっきり見えてくると思う。

20040401.gif

2004年04月01日掲載