■おいしい酒

 お酒を買う時に「テレビCMを重視する」という人が6割を超えているという(『くらしHOW』2003年10月号)。2位は「友人・知人の口コミ」で3割強だから、酒の選択は圧倒的にテレビCMということになる。
 けれども酒の仕事にどっぷり漬かっている身には、このデータは実感とズレた印象を受ける。大量にテレビCMを流せば売れたのは10年も前の話で、いまはそれだけでは期待したほどの反応はない。テレビCMだけで酒を試し買いしてもらえるのだったらありがたいものだ。
 実感としては、酒類も化粧品と同じような受け止め方をされてきているように感じる。友人・知人の口コミがもっとも重視され、ついで新聞・雑誌などの記事、そしてテレビCMという順だ。
 もっとも、友人・知人の口コミの発端は何かと言えば、テレビCMの影響力が大きい。つまりテレビCMはおしゃべりな当たらしもの好きなお客様に飛びつかせるきっかけで、そのあと彼らに語らせる何かが用意されていないと、なかなか次の購買を呼び起こせないのである。
 「あのビールうまかったよ」なんて台詞ではもう口コミにならない。最低でも「どのようにうまかった」のかをスムーズに言えないと広がらない。ワインや清酒のようにふだん食卓に並べる人が多くない酒は、さらに、「なぜ今日なのか」がいる。今は、たくさんの言葉を添えられる酒が「おいしい酒」なのである。

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2004年04月08日掲載