■酒の礼儀作法

 今頃は礼儀作法が気になる時であって、テレビや新聞でもそうした番組や広告を多く目にする。いったい礼儀作法について書かれた本はどれくらいあるのだろうかと、暇に飽かして紀伊國屋書店のWEBサイトで検索してみた。「礼儀作法」にぴったり一致したのは46件。存外少ないものだと思い、次に「作法」と入れると667件がヒット。手紙の作法とかセックスの作法とか、頭に別の言葉がついたタイトルがバーンと増える。
 なんの前ぶりもなく礼儀作法としたら、小笠原流のように評価の決まった枠組みか、人生の達人しか書けないのだろう。そうでなければ誰も読みたいと思わない。
では、誰ならば礼儀作法を語れるのか。私の場合、パッと思い浮かぶのは幸田露伴、池波正太郎、山口瞳の3人である。先日も小説新潮臨時増刊「新入社員諸君、これが礼儀作法だ! そうだ山口瞳さんに訊いてみよう」というのを見かけてつい買ってしまった。
 とにかくおもしろかった。特に高橋義孝VS山口瞳の対談がよかった。「酒ってのは心意気とテンポですから」(高橋)、「エチケットは全部距離ですよ」(高橋)、「エチケットのいちばんの極意、最後のコツはやはり体が健康であることだと思います」(山口)。この3つの言葉に出会えただけでシアワセであった。いつか、これができる酒飲みになりたいと思う。

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2004年04月15日掲載