■食後の酒は上等の酒に限る

 「ワインは食事が終わったらおしまい。だらだらワインだけ飲むものではない」。尊敬する先輩からそう教えられた。ヨーロッパでのワインの成り立ちを考えれば、たしかに彼が言うとおりで、以来、そう心がけてきた。
 けれども日本での酒はちょっと違う。酒と料理の主従関係がヨーロッパと逆なのである。日本では酒が主で、塩辛い肴をなめなめ酒を飲んできた。肴がなくなってからも酒を飲みつづけ、しっかり酔うまで飲む。酒がワインに置き換わってもそのスタイルは変わらない。だから、先輩のスタイルが場にそぐわないこともたびたびあった。
 それが最近少し変わってきたようだ。昨秋のアンケートで「(自宅で)食事が終わると酒を飲むのも終わる」と回答した方が25%にのぼり、「食後も酒を飲みつづける」(22%)を上回ったのである。これからは、先輩の教えが違和感を感じさせることは少なくなるかもしれない。
 ただ、食後に酒を飲みつづけること自体が減っているとしたら、それはそれで味気ないことだ。食後の酒は食事の時の酒よりも自分に向き合うようなところがある。ゆっくりウイスキーやブランデーを飲みながら、一日を振り返ったり、ボーっとテレビを眺めたりして過ごす時間を大事にしたい。ただし、こんな時は上等の酒に限る。安酒では酔いの方にばかり引っ張られて、沈没してしまうからである。

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2004年04月22日掲載