乾杯の国に食中酒は根づくか?

台湾では、今、日本酒の吟醸酒がブームの兆しを見せている。飲まれている場は、日本の和食ダイニングのようなお店。オイルや香辛料も使い、洋食や中華の素材も取り入れた和食系の料理を出す。もちろん、台湾では安い店ではない。
これが、もう少し広がって、家庭でも飲まれるようになると消費量がぐんと増える。日本の蔵元にも、それを期待しているようだが、立ちはだかる「乾杯」の壁は巨大だ。台湾には晩酌の習慣がなく、自宅で夕食をとることも多くないという。複数の職業を掛け持ちする人が珍しくなく、女性も仕事をもっているから、食事は外食が多く、そこで酒は飲まないのだそうだ。
酒を飲むのは週末のホームパーティで、飲み方は「乾杯」。ひとりで酒を飲むのは無作法とされ、誰かと目が合ったら乾杯する。一気に飲み干して、空になったグラスの底をお互いに見せ合う。こんな飲み方をすれば、すぐに酔っ払う。パーティはすぐに乾杯の嵐となる。
酒は問わない。紹興酒、ビール、日本酒ととにかく酒ならなんでも乾杯。ウイスキーや焼酎でも、高価なシャンパンでもぐいっと一息で飲み干す。
ここで、吟醸酒やワインを普及させると言うことは、食事をしながら酒を楽しむスタイルを持ち込むということでもある。新しい食文化をつくるという、なかなかの大仕事。簡単な話ではない。

2004年08月27日掲載