水の味 水割りの味

「水のテイスティングをしていただけませんか」と頼まれてちょっとたじろいだ。まして、その評価を本に載せると聞いて、「いいですよ」とは快諾できなくなってしまった。
その後、編集者としばらくやり取り。ウイスキーの水割りにしてのティスティングということに落ち着いた。
当日、およそ30種類の市販の水が並ぶ。味見するのはソムリエでバーテンダーの向井畝津子さんと私。水割りのベースにするウイスキーはサントリーの響とボウモア。響はブレンデッドウイスキーの傑作。バランスがよく、こんこんと綺麗な香りが立ち上がる。一方のボウモアはアイラ島産のシングルモルト。スモーキーで塩気を感じるクセの強いウイスキーである。
ほとんどの水がおいしかった。けれども水割りにして比べると、相性の良し悪しが歴然。酒の伸びやかな味わいが閉じこもってしまったり、バランスが崩れたり、苦みが際立ってしまう。それは硬水とか軟水の違いでもなく、私には個々の水と酒の相性としか言いようがない。そのうえ響とボウモアで相性のよい水が違う。
ミネラルウォーターの消費量は増えつづけている。ひとりあたりの年間消費量は、昨年、1990年の8倍強にまでなった。そろそろ、「おいしい」だけではなく、「響(ボウモア)がうまい」とか、「狭山のお茶が生きる」などの個性に目を向ける時ではないだろうか。
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2004年09月09日掲載