焼酎にもヌーボー?

本格焼酎の日をご存知だろうか? 週明けの11月1日がそうで、昭和62年に本格焼酎のメーカーが集まって決めたものだ。その年に収穫された芋や米などでつくった焼酎の新酒がこの頃から市場に出始めることから、キリのいい1日を選んで決めたようだ。
ウイスキーやブランデーが代表的だが、世界を見渡すとほとんどの蒸留酒は蒸留後、数年間の貯蔵熟成を経て市場に出される。蒸留したてで飲まれる焼酎はかなり異質だ。理由は、零細なメーカーが多く何年間も貯蔵できるだけの資金的な余裕がなかったからだとか、蒸留したてでも十分においしいため貯蔵する必要がなかったからとされる。おそらく、どちらも正解であろう。
焼酎のなかでもっとも新酒を愛でてきたのは芋焼酎だ。サツマイモは穀物と違って、長期間の保存が利かない。夏の終わりごろから収穫が始まると即座に仕込みに入り、小規模なメーカーは年が明ける前にその年の仕込みが終える。そんな豊かな季節感をもっていたからであろう、本場の鹿児島・宮崎では新酒が心待ちにされてきた。
こうした感覚はワインに非常によく似ているし、灘から一番船で最初に江戸に届く新酒を愛でた気風にもマッチする。今年は、全国各地に芋焼酎の新酒が出回ることだろう。猛暑でたっぷりと陽を浴びて、たくましく育った芋の焼酎を存分に味わっていただきたい。

2004年10月28日掲載