イタリア食文化の国際戦略

イタリアにICIFという外国人向けの料理学校がある。イタリアの食文化を国際商品にしようという長期戦略のもと、地方自治体や加工食品メーカーが出資して設立したものだ。一流の講師陣が地元の最高の食材を教材にして、料理を教えている。イタリアの食材の良さを知った調理人は、帰国してもそれらを好んで使うはずだという考えをよりどころにしている。
ICIFのカリキュラムにはワインももちろん入っている。3ヶ月の講習期間中にイタリアワインの歴史、料理との合わせ方の理論、ブドウ品種や栽培方法の特徴など、総合的な知識を身につける。テイスティングするワインの数は50種類を超え、イタリアのトップソムリエから実務を学ぶ。
イタリアはワインの生産量ではフランスを上回るが、世界的な評価はフランスに劣る。これを悔しく思っていたであろうことでは想像に難くない。同じように手間隙をかけてブドウを育てワインをつくったところで、取引される価格は足元にも及ばないからだ。
高値で取引されるためには、品質を高めるだけでなく、信頼されるブランドが要る。ブランドには価値を裏づける何かが必要になる。
そこでイタリアがとった戦略がICIFの設立であり、世界で最も厳しいと言われるワイン法の制定なのだ。まさに30年先を見た戦略、イタリアおそるべしである。supo20041202.jpg ICIFでの終了試験に挑む日本人学生たち

2004年12月09日掲載