アメリカで日本酒コンクール?

 毎年広島で開催されている「全国新酒鑑評会」はもちろんよく知られているけれど、この四年間、アメリカでも日本酒の鑑評会が行われているのをご存知だろうか? それは「全米歓評会」と呼ばれていて、回を重ねるごとに知名度も人気も上がってきている。四回目の今年は八月二七日に開かれた(残念ながら僕は出席できなかった……)。
 この歓評会はハワイ州ホノルルの「国際酒会」というグループによって運営されている。日本で育ったアメリカ人のクリス・ピアス氏が発足させ、そして「全米歓評会」も彼の発案で始まった。「国際酒会」は当初、日本からやってくるうまい日本酒をシンプルなハワイのパーティの形式で楽しむ会だったのだが、数年前にもっとアメリカで日本酒を広めていこうじゃないかと活動の枠を広げ、歓評会を開くことによってそれを実践しているのだ。
 今年は一五七種の銘柄がエントリーされた。歓評会のスタッフ達が日本の蔵元へ直接連絡を取り、アメリカへの出品酒の送料もできるだけ蔵元の負担にならないようにアレンジして参加しやすい環境を整えた。最初の三年間、参加の条件は既にアメリカで流通しているものだけに限っていたが、今年からは少し条件を変え、今現在は日本だけで入手可能なものも参加できるようにした。それがよりいっそうこの歓評会を興味深いものにしたといってもいいだろう。
 審査の方法は日本で行われている方法とほぼ同様。aきぢょこも正式のものを用い、もちろん「ブラインド」の審査だ。審査員はアメリカ代表が五名、日本代表が五名。ほとんどが業界関係者であり、日本からの五名のうち二名は広島の「酒類総合研究所」から招待している。僕も最初の年に審査を経験させてもらったが、審査が非常にハイレベルに厳密に行われていること、そして結果が慎重に扱われることに感心した。
 提出された酒は「純米酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」にグループ分けされる。今年の結果は全グループを通して、金賞受賞が三一酒、銀賞受賞が四三酒だった。
 審査が終わると次の日は一般公開だ。出席者は審査の結果を見ながら、自由に出品酒のa酒ができる。地元の一三軒のレストランが用意した食べ物も楽しめ、会費は一人七五ドル。
 また今年は日本からの審査員二人が吟醸酒についての講演を行った。四種の酒をとりあげて講演の聴衆と共にa酒をしながら、ひとつひとつ話を進めていくという内容だったという。その四種の酒は「金賞受賞の酒」「あと少しで受賞は逃したが注目に値する点がある酒」「受賞にはほど遠い酒」「おもしろく、話題になる酒」というものだった。これはアメリカの日本酒好きの人々にとっておもしろいというだけでなく、非常に良い勉強になったと思う。もし僕もこの講演のことを先に知っていたなら、何をおいてもハワイへ行っていた。「今年はもう大変だったよ、なにせ出席者が九〇〇人近くだからね」とピアス氏は嬉しい悲鳴をあげている。
 さてこの「全米歓評会」だが、最初の二年はハワイだけで行われた。そして去年から、審査はハワイで行うものの、一般公開はサンフランシスコ、ニューヨークでも行われた。各地ですべての出品酒がa酒できる。どこも人で溢れかえることだろう。
 このような会のおかげで日本酒が注目され、ますますアメリカでの日本酒人気が高まってくれることだろう。これからもずっと歓評会が続いていくことを心から願いたい。
(ジョン・ゴントナー:日本酒ジャーナリスト)

月刊 酒文化2004年11月号掲載