味の街

 「トレ・ビッキエーリ」。最近この言葉をよく耳にする。イタリア語のちょっと分かるあなたなら3つのグラス?って、そう思うかもしれない。この謎を解くきっかけになったのは、ワイン好きな私も含め、飲酒業界が毎年首を長くして待ちかまえているイタリアワインガイドブック「ヴィニ・ ディタリア(イタリアのワイン)」との出会いである。アメリカに「ヒュー・ジョンソンガイド」があるように、イタリアでは「ヴィニ・ ディタリア」といえば誰もが知っており、出版社ガンベロ・ロッソ社とスローフード協会との共著で、毎年リリースされている。英語とドイツ語に翻訳されているこの本は、レストラン・ワイン業界にかなりの影響力のある評価本であり、ワイン銘柄の世界での知名度と値段を左右する。つまり「トレ・ビッキエーリ」とは最高評価ワインに送られる名称で、これを受賞することは大変名誉である。毎年イタリア全国の2〜3万本数からブラインド・テイスティングの審査によって決められる。ちなみに2005年にトレ・ビッキエーリを獲得したワインの数が260本で、ピエモンテ州は61ワインでトップに立ち、トスカーナ州は58ワインで第2位、近頃白ワインで注目されているフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州は26ワインで3位を飾った。
 これ以外にもワインガイドやイタリアで大変権威があるグルメ・ワインの月刊誌、都市別レストランガイド、様々なお酒ガイドや料理本などを出版しているガンベロ・ロッソ社は、二年ほど前にローマに珍しいほどモダンでちょっと洒落たビルを建てた。チッタ・デル・グストと呼ばれるその建物の中に食通にはたまらない斬新なアイディアが豊富。名前はなんともシンプル。チッタは街でグストは味、まさに味の街であり、最近スローフード、ワイン好きの間では話題のスポットとなっている。
 5階のビルの内装は洗練されている。一階は500人を収容する1000gのイベント用の大きなホール。この会場は展示会、講演、料理ショーなどに使われる。二階にグルメ本やキッチンアクセサリーなどを揃える専門店と、演習室つきのレストラン、バール、ピッツェリアと2500gのテラスがある。3階にはガンベロ・ロッソの学校教室と「キッチン劇場」というマルチメディアのシアター形式の会場がある。各教室にビデオカメラがついており、同時に80人の観客が試食できる。四階はテレビスタジオがある。ガンベロ・ロッソはイタリアのライサットという衛星チャンネルでグルメチャネルを放送しており、その番組の撮影やプロダクションはここで行われる。750gのスペースと250gのテラスがある五階では、テアトロ・デル・ヴィーノ(ワインの劇場)と名づけられた、ワインが主役の空間がある。試飲会やワインセミナーなどが行われるこの場は3000本のワインセラーを誇る。五階には他にプライベートなレセプション用の部屋が設けられている。
 コンサートを楽しみながら有名なシェフの料理が味わえ、また食品やワインについてより詳しく知りたい、料理が習いたいときは、料理やお菓子の特定のコース、または一回限りのレッスンも受けられ、プロの調理師や趣味でイタリア料理を習得したい人に最適である。
 見て、聞いて、触れて、かおって、味わって、一階から五階まで、五覚全てを刺激しながら、味の街をあなたも散歩してみませんか。
(シェイラ・ラシッドギル:コラムニスト、ローマ在住)

月刊 酒文化2005年04月号掲載