ワイン購入の新しい方法

 最近イタリアでよく耳にする言葉がある。ゆっくりとだが確実に多くのファンを確保しているオークションである。イタリアにおけるその歴史は意外と浅く、クリスティーズやサザビーに代表される二〇〇年以上の歴史を持つロンドンと違い、本格的に始まったのはフィレンツェの大手オークション・ハウス、パンドルフィーニが初めて開催した一九九九年以降のことだ。それ以来ワイン専門オークションの普及が加速している。
 急速に伸びてきているこの新しいビジネスは最近様々なチャネルや形で展開されている。たとえば、もっとも話題となっているワインに絞って、様々なヴィンテージや生産者を集めるオークションが挙げられる。
 一九四五年〜二〇〇二年の当たり年のバローロを扱うオークションとして恒例行事となっている、バローロオークションの第八回が九月にピエモンテ州のクーネオにあるジャンニ・ガリアルド社で開催された。二二社が参加したこのオークションで、バローロ・モンフォルティーノ一九七四年(ジャコモ・コンテルノ社)一二本を、デンバーのインポーター、ロンドンのレストランオーナー、香港リッツカールトン内の「トスカーナ」などが競いあった末、ミラノの匿名の人物が四六〇〇ユーロというオークションレコードで落札。他にもケニアの慈善事業への寄付金として、バローロ・プレーヴェ二〇〇一年の二本が三八〇〇ユーロで、またこのオークションの目玉として製作されたクパージュの二二八?の樽が一万四〇〇〇ユーロで、落札された。
 バローロと共にイタリアワインの王の位置を争うブルネッロ・ディ・モンタルチーノもトスカーナ州モンタルチーノでのオークションの主役だった。様々なヴィンテージやワイン生産者の約五〇〇本のボトルが出品されたこのオークションは、ブルネッロだけしか扱わない初めてのものであった。一八〇〇年代にブルネッロを造った歴史的なビオンディ・サンティ社の一九六一年の三本は二二〇〇ユーロで落札された。イタリア人や外国人のこのワインへの愛着を改めて示したこのオークションで集金された二万九〇〇〇ユーロは、モンタルチーノ市にある教会の修復のために使われる予定。
 また、ネットオークションとチャリティー・オークションを結合したワイン・オークションが一〇月末に行われた。ワインの促進を担当するエミリア・ロマーニャ州のエノテーカは、WWF(財団法人世界自然保護基金)にグットゥルニオワインの数本を贈り、そのワインがイーベイで出品された。WWFのロゴを持っているボトルにエミリア・ロマーニャ出身の人気歌手などがサインして、落札金額は全額WWFのエミリア・ロマーニャの保護区へ寄付された。
 ワイン・オークション市場拡大の原因はイタリア人の認知の変化のほか外国人参加者の参入とされる。ネットオークションの認知度向上も関連業界の大きな注目を集めている。
 オークションは一般的に美術品やアンティークが数千万円、数億円という高価格で競り落とされるイメージを持っているが、一本数千ドルもするヴィンテージ・ワインだけでなく、一本二〇ユーロ前後のワインもオークションの対象となり、誰でも参加できる。良いワインを割安で手に入れることがやはりオークションの大きな魅力のひとつ。
 ワインを手に入れる新しい方法としてますます脚光を浴びることになりそうだ。
(シェイラ・ラシッドギル:コラムニスト、ローマ在住)

月刊 酒文化2006年01月号掲載