ブランドカフェ、ブランドホテル時代へ

 イタリアファッションの発祥地でもあるミラノは、ここ数年来、トップブランドがホテル、レストランなどに進出している。各ブランドが理念やデザインの独創性を表現する、 最上級の美と愉悦のスポットが次々と登場しているのだ。ブランドが伝えているスタイルを、あらゆる生活空間に持っていきたい気持ちから生まれているこの外食・ホテル産業への進出はどんどん加速している。
 アルマーニカフェ・レストランは、もっともよく見られるビジネスモデルで、「エンポリオ アルマーニ」の隣にあり、お店で買い物しているお客さんを優先に考えられたスペースである。シンプルながらシックなイメージを持つアルマーニのレストランでは、厳選された素材の7割がオーガニックである。ワインリストもイタリアを中心にバランスが取れたリストである。同社は、ミラノの二軒のカフェのほか、ドイツ、フランス、オーストラリアなど10軒のカフェを所有している。さらに、初めてのアルマーニホテルをドバイで超高層ビル内に2008年開業する。ドバイに続いて、ミラノ、ロンドンなどでも開業予定。同社の広報担当は、「外食やホテル産業進出によってアルマーニ・スタイルをあらゆるコーナーに浸透させ、アルマーニを複合的なライフスタイルブランドに成長させたい」と言う。
 ブランド品が並ぶミラノのモンテナポレオーネ通りの近くにあるブルガリホテルは、そのお洒落なデザインで現在最も注目されているホテルの一つである。4,000平方メートルにわたる広大な庭園の中央に立っているホテルは、高級インテリアデザインを誇り、プールやスパが付いている。照明にも細心の注意が払われたホテルの1泊料金は800ユーロからだそうだ。2軒目は今年の10月にバリ島にできる予定。
 また、フェラガモは、フィレンツェでアルノ川沿いに個性的な数件のホテルや豪華なスイートを経営している。その他、日本人と共同経営でイタリア料理と和食のフュージョン料理を提供するレスラン・バーを経営。トスカーナの田舎に既にアグリツーリズモを経営する同氏は、2007年にトスカーナ州のモンタルチーノ市にゴルフ場、ワインスクールや乗馬学校などが供えられた五ツ星のリゾート、またはローマにもスペイン広場のそばに今年高級ホテルを開業する予定。
 多色なバロックスタイルのミックスであるロベルト・カヴァッリもそのスタイルを反映させるカフェを経営。2002年にできた1軒目のカフェはガラスの天井やカモシカの皮のソファなどにこだわった空間で、芸能人の集合場所でもある。店内は食器から家具類までカヴァッリのホームコレクションによるインテリア。バー&レストランは、夏には庭も開放してイタリア人の大好きなオープンカフェに。料理は今イタリアで流行のスタイルである、イタリアンを中心にした創作料理。この人気を受けて2004年に2軒目をオープンした。
 自分のスタイルにあったホテル、食事やファッションなどのしっかりしたトータルライフコンセプトが今後のキーワードになりそうだ。
(シエイラ・ラシッドギル:コラムニスト、ローマ在住)

月刊 酒文化2006年10月号掲載