ワインセラー散歩

 屋外でのイベントに出かけるのが楽しい季節になってきた、春から秋にかけては、週末となると各地で様々なイベントが開かれる。 ワインフェスティヴァルと言えば、ブダペストでは、9月にブダ王宮で開催されるフェスティヴァルが有名だが、それ以外にも市民公園の一角や、街中の広場などで、ワインやパーリンカ(果物の蒸溜酒)のフェスティヴァルが、いくつか開かれている。ワインセラーやパーリンカ醸造所の出店のカウンターには、試飲できるボトルが並び、店の人から説明を聞きながら味わう事が出来る。ソーセージやパプリカ粉のふんだんに使われた煮込み料理など、ハンガリーらしい料理や、甘い香りの漂う焼き菓子などの屋台が軒を連ね、その周りにはベンチとテーブルが用意される。さらに、工芸品やおもちゃを売る出店があったり、ステージが作られて、バンドの生演奏や子ども達のダンスなどが披露されたりもする。
 実際のところ、どのイベントもだいたい同じような雰囲気なのだけれども、休日を屋外で楽しく過ごす事が出来るので、天気がよければ大いに賑わう、ハンガリー人はイベント好きで、それがワインやパーリンカなど、酒がメインのものでも、子ども達を連れて家族で揃って出かける姿を良く見かける。そして、ワイン産地の町では、少なくても1年に1回はワインフェスティヴァルが開かれている。
 ブダペストの西から約30キロのところにある町、エチェック、ハンガリー国内に22カ所あるワイン生産地の中で、一番ブダペストに近い産地だ。正確に言うとEtyek-Budai Borvidék(エチェックーブダ・ワイン生産地)なので、 以前、このコラムに書いた、ブダペスト郊外にあるスパークリングワインの生産地もここに含まれる。エチェックは白ワインの産地として知られていて、国内外のコンテストで賞を取るほどの上質なワインを生産するセラーもある。軽めでドライなワインが多く、料理にも合わせやすいのだろう、ブダペストのレストランのワインリストでもよく見かける。品種はシャルドネ、ソービニョン・ブラン、リズリングなど、また、ハンガリー産の品種、イルシャイ・オリヴェールから作られる爽やかな香り高い白ワインも人気だ。
 このエチェックでは、毎年5月の週末(2011年は21、22日)にワインセラーが一般客に開放されるフェスティヴァルがある。2003年から始まったので、比較的新しいものだけれども、ブダペストから近く、臨時バスなども運行されアクセスが良く、日帰りで十分楽しめるので、多くの人でにぎわいを見せる。町の中心部だけでなく、それぞれのワインセラーがテイスティング会場となるので、広範囲にわたるが、区域を分けてミニバスが巡回しているし、そんなに遠くないワインセラーを目指すのなら、ワイングラスを片手に、緩やかな丘陵地帯に広がるぶどう畑の間を、のんびりと歩いていくのも楽しい。天気がよければ、青空に新緑の映える清々しい風景が広がり、初夏のぶどう畑が広がる風景を満喫できるだろう。(すずきふみえ:ブダペスト在住)

月刊 酒文化2011年05月号掲載