「吟醸酒のお燗が好き」な人は六四%

 吟醸酒に限らず、上等な日本酒は冷やで飲むのが「通」だと思っている方が多いのではないでしょうか。確かに香りの高い酒の場合には、温めると香りが強く広がりすぎると感じます。けれども、吟醸酒の中にも味わいの深いものなどさまざまなタイプがあり、燗をつけたほうが本領を発揮するものもあります。清酒を温めて楽しむという昔からの英知は、吟醸酒であっても当てはまることは多いのです。
 回答状況を見ると、全体の六四%が「好き(YES)」と答えています。
 性別では男性は賛成が六一%に対して、女性の賛成が六九%と高くなります。意外なことに年齢別では若年層のほうが賛成の比率が高く、二〇代七八%、三〇代六七%となり、四〇代〜五〇代が六〇%前後で、六〇代以上では五六%と下がります。
 ここから想像できることは、従来の日本酒に対する知識や先入観が薄い人たちでは、吟醸酒でも時に応じて燗につけることにあまり抵抗がなく、一方で、比較的日本酒への経験が深いと思われる層では、吟醸酒は冷たくして飲むべしという固定観念が強いのではないかということです。ちなみに、解答者の飲酒頻度(日本酒に限りません)からは、格別の傾向は見えませんでした。また、今回は久しぶりに回答者が一〇〇〇人の大台に乗りました。吟醸酒のお燗というテーマへのみなさまの関心の高さがうかがわれます。
【マスターTの感想】
 今回の結果は想定外でした。全体の比率もさることながら、若い人や女性のほうが燗酒が嫌いだと思っていたからです。しかし、回答者のコメントなどを子細に見ていくうちにだんだん納得してきました。嫌いと答えている人の意見を集約すると、「吟醸酒などよいお酒を燗にすることはもったいない、そのまま冷たくして飲むほうがおいしい」というあたりになります。つまり、燗をつけるということに積極的な価値を見いだしていないのです。きっと過去のまずい燗酒体験が影響しているのではないでしょうか。確かに二〇年くらい前には大衆居酒屋で飲む燗酒はおいしくありませんでした。それは酒自体の問題とともに燗のつけ方の問題でもありました。熱すぎたり、燗冷ましでも平然と使ったり、飲食店の酒燗器の管理意識はとても低かったと思います。
 旨い燗酒を提供するには、カクテルと同様に技術が要ります。若者・女性など最近日本酒を飲み始めた層にとっては、燗酒は新鮮な飲み方であり、このごろの飲食店は燗にも気を使う店が増えていますから、おいしさが実感できているのではないでしょうか。燗酒のおいしい店などの雑誌記事も見かけるようになってきました。燗酒はこれからおもしろくなるに違いありません。
【「YES」の理由】
今まで冷たいお酒ばかり飲んでいましたが、お正月に親戚の家でお燗を初めて飲んでそのおいしさに感動しました。お燗したお酒はおいしいです!(ハッピー:女性・二〇代)
少しもったいないかなと思いつつも、お燗して飲むと贅沢感が増す感じが良い(ボブ彦:男性・二〇代)
父とワカサギ釣りに行き、そこで炭火でお燗した吟醸酒を飲むのは、釣れても釣れなくても冬の最高の楽しみの一つです、母には吟醸酒じゃなくてもと言われますが(あいとママ:女性・三〇代)
温度によって、まろやかになったり辛口になったりといろいろ楽しめるところがいいと思います。家でお燗にする場合は熱すぎたり、ぬるかったりなのでどのくらいの温度、感じで味の変化になるのかが簡単にわかると燗酒がもっと楽しめると思います(ふじわらさんぽ:女性・三〇代)
たまにやっています。燗をすれば別のおいしさがあると思います。まわりからはもったいないとよく言われます(トミー:男性・三〇代)
徳利に口を近づけると、ホワッと香りが漂うのがたまりません(あっこ姉さん:女性・四〇代)
冷やで飲む事が多いですが、冬はお燗もいいですね。吟醸の燗だと口当たりが変わって楽しめると思います(こんちゃん:男性・四〇代)
吟醸酒を燗にするって言うと主人はもったいないって言うのですが……体に良くおいしい飲み方を考えた時には吟醸酒もぬるめの燗が一番だと思います(白が好き:女性・五〇代)
邪道な気がしないでもないが……でもうまいんです(ジンジン:男性・五〇代)
【「NO」の理由】
せっかくのおいしさがもったいないような気がします(とんこ:女性・二〇代)
風味が台無しになる。熱燗は安酒でよい(ダイオード:男性・二〇代)
冷のほうがお酒のよいところをいい状態で味わえると思うので燗にしてはもったいない。冷たいほうが香りもいい(ゆみみん:女性・三〇代)
私は純米吟醸を好んで飲みますが、一五℃以上になると口に入れた後の香気と味覚が弱くなるような気がします。杜氏が丹精こめてつくり、年毎に味が微妙に違う純米吟醸は、蔵から出た状態が完成だと思っているので、あえてそこから香気を飛ばさなくてもいいと私は思っています(居酒屋のたぬき:男性・三〇代)
吟醸酒の持つフルーティーな香り、口当たりが消えてしまう。貧乏性かもしれないが、吟醸酒をわざわざ燗で飲むのはもったいないという気がする(あられ:女性・四〇代)
いいお酒を温めると、研ぎ澄まされた「冴え」が消えてしまうように思います(カズ:男性・四〇代)
あたたかい吟醸酒は想像できない、きりりと冷えているのがおいしい(たけちゃん:女性・五〇代)
好きとか嫌いとかではなく、吟醸酒は冷やで嗜むのが当たり前という、変な常識を刷り込まれていた自分に気が付きました(こほ:男性・五〇代) ■

2006年02月実施