賛否は完全に二分した

 盛大なお花見というと豊臣秀吉の醍醐の花見などが有名です。しかし一般庶民にまで広がったのは江戸時代中期、徳川吉宗の時代と言われているので、それほど古い習慣ではないようです。しかし、ぱっと咲いてぱっと散る桜の花というのは、日本人に精神にうまくフィットしたのか、現代に至るまで春の風物詩としてあまねく定着しているといってもよいでしょう。
 そんな日本人の精神性と関係があるのか、花見では日本酒を飲んだ、飲みたいと答えた人は全体の半分を占めました。昨今の日本酒の消費量の減少などから考えるとかなり高い数値といってよいと思います。性別では、男性が六〇%と高くなり、女性は四〇%にとどまります。年齢別では、二〇代、三〇代ではそれぞれ四七%、四三%と少し低くなりますが、四〇代〜五〇代では五四〜五%と高くなり、六〇代以上では八〇%に達します。
 花見で日本酒を飲む人の理由は、おおむね予想通りの意見でしたが、おもしろかったのは、「女性はビールを飲むとトイレが気になるので日本酒のほうがよい」という意見が複数あったことや、「大勢で盛り上がって騒ぐのには日本酒よりもビールのほうが合う」という意見が目立ったことでした。
 花見の日本酒というと団体の宴会で、飲みすぎて酔っぱらって醜態をさらしているという印象があったのですが、いまの若い世代は、そもそも大勢で盛り上がって騒ぐときにはビールというイメージが強いようです。日本酒一升瓶が酔っぱらいの代名詞などというのも昔話になってしまうのでしょうか。
【マスターTの感想】
 花見で日本酒を飲むと答えた人たちは、日本酒をしみじみと飲むことを志向している人が多いようです。大勢での花見ではなく、少人数で桜を愛でて、酒を少し飲みほろ酔い気分でのんびりと過ごすといった感じの光景が想像されました。一方で、日本酒が好きでも花見では飲まない、飲みたくないと答えた人は、日本酒だと飲み過ぎる、酔っぱらってしまうなどを理由にあげています。
 どちらも事実なのでしょう。確かに、私の見る限り上野公園などでも大騒ぎをする花見客には、日本酒を飲んでいる人はそれほど見つけられませんでした。みんなで盛り上がって騒ぎたいという人は、好き嫌いの分かれる日本酒ではなく、万人受けするビールやチューハイを選んでいるのかもしれません。
 花見で日本酒を飲んでいる客はマナーがよいと言われる時代が来るかもしれません。しかし、そうなったときの日本酒は、大衆の酒ではなく、スノッブの酒になっていることでしょう。
【「YES」の理由】
どんな料理にも合い、常温でもおいしいお酒は日本酒だと思っているから(マーチャン:男性・二〇代)
きれいな夜桜のなか、ほろ酔いで見る風景も気持ちがいいものです。日本特有の桜の季節と、日本独自の日本酒。日本でよかったなぁと思う瞬間です(キララ:女性・二〇代)
花火はビール、花見は日本酒という記憶が幼少時代からあります。結婚してから、我が家でもそれが当たり前のようになっています。やはり日本を象徴する花、桜を見る時は日本酒がピッタリだと思います。それに合わせてお弁当も作るので日本酒に合う料理にします。また、塩で漬けた桜の花を浮かべて最後にお湯を入れ、ホッとするのもまた格別(エリママ:女性・三〇代)
ビールだと宴会でどんちゃん騒ぎのイメージがあります。日本酒で落ち着いて花見をするのが好きです(だいちゃんのパパ:男性・三〇代)
北海道のお花見はそう気温が高くないのでビールだとトイレも近くなって落ち着かないし、日本酒が好きだからという理由もどちらもあります(おにぼん:女性・四〇代)
団体で宴会でなく、平日の午後に風に揺れて花びらが酒にのるようだと日本人を感じる至福の刻ですね(まる:男性・五〇代)
春は花見、秋は菊酒、正月は屠蘇と、年を通じて酒に季節あり。特に待っていた春に桜咲く土堤で茣蓙敷いての宴は倭人の習いである(chris:男性・六〇代以上)
「酒なくてなんの己の桜かな」。桜は日本を象徴するいわば、日本の国花です。したがって、ワインや焼酎ではなく、日本酒を飲むべきでしょう。でも、快晴の時のビールは軽飲料感覚で許されるかな(フー:男性・六〇代以上)
【「NO」の理由】
花見の席でお酒を飲んで醜態をさらしている人をテレビで見ているので、あのようになりたくない(ター:女性・二〇代)
嫌いではないのですが、コップが必要になるのがめんどくさい(マコ:女性・二〇代)
日本酒だとどうしても飲んだ後のビンの後始末に困る。お花見のお酒は、ビールがほとんどですね(りゅうゆう:女性・三〇代)
ゆっくり飲みたいので、日本酒だとアルコール度数が高い。低アルコールなものを飲みますね(鉄瓶:男性・三〇代)
片手に持つのに缶ビールのほうが持ちやすいので。カップ酒があれば大丈夫かもしれませんが(こめくん:女性・四〇代)
花見はやはりビールで乾杯して大騒ぎでしょう 自分としては日本酒はゆっくり落ち着いて飲みたいので、花見では飲まない(とうちゃん:男性・四〇代)
花見は昼間におこなうことが多く、太陽の下ではビールになる(セカンド:男性・五〇代)
お花見はあくまでも桜を愛でて楽しむものであると思います。お酒を飲んで騒ぎまくっている日本の花見は大嫌いです(エビチャン:男性・六〇代以上) ■

2006年04月実施