酒蔵見学経験者は五七%

 日本に酒類の製造場は何カ所あるのでしょうか。全国に分布している清酒と焼酎だけで二五〇〇以上はあり、ビール・ウイスキー・ワインなども含めれば、ほとんどの地域から日帰り訪問が可能でしょう。近代的なビール工場と伝統的な清酒や焼酎の蔵では雰囲気も異なりますが、それぞれに見るべき点があります。そして素敵な工場ならば、見学した人のほとんどがファンになると言われます。そんなこともあり、工場見学に対する取組を強化しているところが増えてきました。
 回答者四七七名中、見学したことがある人は五七%でした。全体の数値の高低については、論評しにくいですが、前述の要因もあり年々高くなってきていることでしょう。性別には、意外に差が少なく男性が五九%、女性が五五%でした。年齢別には、二〇代が四九%、三〇代〜四〇代が五四〜五三%で、五〇代が六七%、六〇代以上が八一%と、年齢が上にいくにしたがい、経験者が多くなっています。
 飲酒頻度別で見ると、こちらは頻度の高い人ほど経験率が高くなっていました。ほとんど毎日の人は六六%に達し、週一回未満の人は三八%にとどまります。
【マスターTの感想】
 回答者の多くは、スタッフの対応を含めて酒造工場見学の満足度が高いようです。ビールやウイスキーでは、清潔な工場、丁寧な説明などへの評価が高く、清酒や焼酎では、造り手の人柄に触れられたことや試飲への感謝などが目立ちました。
 課題をあえてあげれば、有料化の可能性を探ることでしょうか。回答からも「ここまでしていただいて無料では申し訳ない」という意見が複数あがっています。訪問者は、見学料金以前にそこに至るために時間や経費のコストを負担しています。無料のままで、工場側に少しでも「見せてあげる」という気持ちが残るのであれば、料金を取ってでも高い満足を提供するほうが生産的です。製造現場を訪ねてもらうというのはファンづくりの最強の方策です。このチャンスを逃す手はありません。
 見学者受け入れで先行するスコッチウイスキーの蒸溜所はほとんどが有料で、見学ツアーの設定やおもてなしも洗練されています。年間数十万人を迎え入れるところでは、入場料収益と物販収入も蒸溜所ビジネスの重要な要素となっています。
【「YES」の理由】
「そこまでのおもてなしを!」というくらい懇切丁寧な説明をしてくれるところもあれば、マニュアル通りというところもあり、その差に驚きました。真摯に酒造りに取り組んでいる蔵は、気持ちが伝わり応援したくなります(タツ:男性・二〇代)
子供の頃、親に連れられウイスキー工場に行きました。静寂の蒸溜所と整然と並ぶ樽。子供心にも秘められた何かがあるのだとワクワクしながら覗きこんだものです。何度も訪れるうちに、職人の技と知恵に頷くようになり、いつしかウイスキーが飲める年になりました。下戸の両親はただ身近にあるレジャースポットとして連れていったのでしょうが、自分はすっかり酒好きになりました。今でもウイスキーを選ぶときには、あの樽の静けさと香りをイメージします(MINA:女性・二〇代)
見学の最後に飲ませていただいたワインには、ワインが全く素人の私も素直に「美味しい」と感動させられた(FUKAWA:男性・三〇代)
社員旅行でビール工場へ行きました。案内係の方の説明がとても分かりやすく、非常に楽しめた。ビールも最高! これで無料とは信じられません(motty:女性・三〇代)
日本酒には興味がありませんでしたが、友人に誘われ見学しました。熱心に教えて下さり、本当に美味しかった。以来、日本酒には目がありません(ぽんすけ:女性・三〇代)
県内の酒蔵を見学しました。田舎ということもあるのかもしれませんが、おっとりと丁寧な対応。試飲も「お好きなだけ」といったおおらかさ。車だったので思わず買い込んでしまいました(ちゃろ:男性・四〇代)
お酒が大好きなので、遊びのついでによく行きます。対応は、個人客と団体客で差があるところもあり悲しくなります。来てくれたという気持ちを大事にしてほしい。試飲だけが目的では無いのです(ニィニィ:男性・四〇代)
ネットでみて面白そうだったので山梨のワイン工場に行きました。最初はブドウの収穫体験。撮った写真をラベルにしたワインを頂きました。二回目は工場見学のツアーに参加。ワイン蔵は趣がありとても良かったです。また参加したいと思っています(スギヤマ:女性・四〇代)
県内の酒蔵で見学可能なところはほとんど行きました。見学の理由はお酒の造り方を知りたい、蔵元や杜氏さんに会いたい、しぼりたてを飲みたいの三点に集約されます。毎年見学を繰り返すのは、一回だけでは酒造りを理解できないのと、新しい情報を得たいからです(ジロー:男性・五〇代)
たまたま入った古民家レストランが酒蔵の直営で、裏の酒造場を見せていただきました。ガラス越しに見学できて衛生的。造りの現場は興味津々ですが、雑菌を持ち込むのではと入るのは気が引けます。衛生管理とかをどう考えているのかも興味があります(金魚:女性・五〇代)
酒の工場見学は、定型化されてきている。見学記念にいろいろな土産品を販売する傾向にあるが、日本の食文化の中で、世界に誇り得るものとしての酒文化について、もう少し丁寧に説明がほしい(タカシ:男性・六〇代以上)
最近は、興味本位の不節操な見学者が多いと思う。化粧した人は入れないとか、蔵側は見学者に厳しく注文をつけてよいと思う(S・K:男性・六〇代以上) ■

2006年05月実施