自宅で飲む人は六五%

 最近は、飲食店で自分で湯煎燗酒を楽しめる装置も開発され、徐々においしい燗酒を手軽に飲める環境が整ってきました。とはいうものの長年業界あげて冷酒を訴求してきたつけか、「おいしいお酒は冷して飲む、燗にするともったいない」と思いこんでいる人はいまだに多いようです。
 回答者は、六五%の方が冬場には自宅で月に二〜三回は燗酒を飲んでいました。性別では男性が六七%、女性が六一%と六ポイントの差ですが、これは予想よりも少ない差でした。年齢別に見ると、もっとも多いのが六〇代以上の八六%で、以下は六六%〜五九%と僅差ですが、二〇代が二番目に高くなっていました。
【マスターTの感想】
 自宅で燗酒をおいしく飲むときの課題は、二杯目以降をいかにスムーズにつくるかだと思っています。飲んでいる途中で、席を立ちレンジの前でしばし待つというのは、いかにも興ざめしてしまうからです。だからといって、一度に多くつくりすぎては冷めてしまう。手近にストーブか火鉢があればよいのでしょうが、それも最近の住宅事情ではままなりません。
 冷やして飲むことは誰でも簡単にできますが、適温に温めて飲むためには、それなりのノウハウや手間が発生します。昔は、飲食店ではお燗番と呼ばれる係の人がついていたこともあるくらいで、料理同様に飲み頃での提供にこだわりがあったものです。それゆえに燗酒の飲食店での価格はビールなどよりも値入率が高かったものと思われます。
 しかし酒燗器が導入されて手間が省けるようになる一方、生ビールのサーバーのようなメンテナンス思想もあまり普及せず、長い間おいしい燗酒の提供ということは考えられないまま、価格だけが高止まりしてきたのが実態ではないかと思います。そのような時代の中で、飲食店で飲む燗酒=うまくない酒という認識は、中高年の間にはかなり定着しており、これを払拭するにはまだ時間がかかることでしょう。
 それでも、今回のアンケートからはいくつかの光明も見えています。
 若い人は決して燗酒を嫌っていないこと、燗酒を飲むシーンは独酌が少なく夫婦や親子の語らいの場面で飲んでいることなどがそうです。燗酒は、冷酒や他の酒類以上にコミュニケーションを取り持つ酒なのかもしれません。
 さらにつけくわえると温めるということからの想像なのか、「ゆっくりと飲む」「癒し」など自身をリラックスさせる飲み物としての評価もあり、他の酒類以上に精神的な効用の多い酒の飲み方であるということも再認識できました。
 燗酒を楽しく家庭で飲むシーンの提案が進めば、日本酒の復権には大きな力となるのではないでしょうか。
【「YES」の理由】
鍋をするとどうしても飲みたくなる。燗の機械を買ったので簡単です(バウア:男性・二〇代)
燗酒はワタシ癒しの時間であり、主人とのコミュニケーションの時間でもあります(ユキ:女性・二〇代)
日本人ですから冬には熱燗です。ストーブに薬缶で徳利です。ぬる燗のほうがやさしい味が楽しめるので好きです(アントニオ:男性・三〇代)
燗をつける事で、日本酒のキリリとしたおいしさがひき出され、口の中がさっぱりして料理の味がよくわかるようになります。我が家は京都の清課堂で買ってきた「錫たんぽ」と決めています。たんぽの中に、二〜三個の泡がスーっと上ってきた時が飲み頃(kuyama:女性・三〇代)
寒い冬の主人との語らいの場には欠かせません。小さな子供がいるので邪道ですが、割と熱めにレンジでチンです(ヨッコ:女性・三〇代)
この時期はお鍋料理が多く、燗酒を飲むことが多いです。ぬる燗にすると日本酒の良い香りがふわっとたつので、とっても幸せな気分になります。忙しい時はレンジですが、湯せんでじっくり人肌に温めるのが大好きです(とよ:女性・三〇代)
私は薬缶でお湯を沸かして飲みたいのですが、実際には女房が電子レンジでチンです。.味けないですね(たかちゃん:男性・四〇代)
小鍋にお湯を沸かして、湯飲みに入れたお酒をつける。ぬる燗から熱燗まで自由自在。二杯目はお湯が少しぬるくなるので少し時間がかかるが、いったん沸かせば二合程度のお酒はこれで充分。コタツから出ることもない(L-S住吉:男性・五〇代)
冬は燗酒が一番旨い時。日本人に生まれてよかったとつくづく思う時です。本当は湯煎でつけたいのですが、女房の料理の邪魔になるので、やむなく電子レンジです(モネ:男性・五〇代)
ゆっくり過ごせる日にチビチビやるには熱燗がもってこいです。不精なのでストーブの上に鍋を置いてその中に徳利を入れて温めています。家の中の乾燥も無くなるし一石二鳥です。無くなったら又徳利にお酒を入れてゆっくり待っています。待つのもまた楽し!(飲兵衛ママ:女性・五〇代)
冬に限らず無性に燗酒が欲しい時がある。薬缶にお湯を沸かして徳利を入れて、それなりに手間をかけてつくる(トシ坊:男性・六〇代以上)
【「NO」の理由】
冷酒のほうがすき、という事もありますが、燗は面倒くさい。これに尽きます( i:女性・三〇代)
冷酒のほうが酔いにくいような気がする。熱燗より冷たいほうがどんなおかずにも合うし、部屋の中は寒くないです。それに後で食器を片付けるのは私だから(はにまるみどの:女性・三〇代)
面倒くさいが本音。いちいち一本ずつ温度を確かめるのも、せこせこしていて、ゆったり飲んだ感じがしない。「熱燗の温度が思いのまま」とかいう、電化製品もあるみたいだけど、そこまでするのもという感じです(かやっかー:男性・四〇代) ■

2007年01月実施