酒のことを話す人は六八%

 「今年から杜氏が代わったから酒の味が軽くなったな」「これは原材料も有機栽培の米を使った純米酒だからひと味違うんだ」日本酒マニアの試飲会ではよく耳にする台詞である。仕事がら酒場に行くとよく酒の話題をふられるので、世間はそんなものかと思っていた。しかし今の若い人は寿司屋でも甘いカクテルを飲んだりする。酒に対して思うほど興味や関心を抱いているのかは、少々疑わしい。そこで今回の質問設定となった。
 今回の「酒類について、友人や知人と話すことはありますか」という質問に対して、YESと答えた人は六八%に達した。年齢別には、どの年代も六七%〜七〇%とほとんど違いがない。また、酒類飲用頻度で比べても、週に一回未満の人は三五%と低くなるが、それ以外は六七%〜七四%とあまり有意な差は見られなかった。唯一差が出たのが性別で、男性は六五%なのに対して、女性では七三%に達した。
【マスターTの感想】
 飲んだお酒、もしくは飲んでいるお酒について語り合うということは、男性・それも比較的年齢が上の世代に多いだろうと想像していた。一般にお酒の蘊蓄を傾けるというのは、そのような世代の人々に好まれる話題だと思ったからだ。確かに酒の飲み方、酒の作法について話すというケースは男性からしか出てこなかった。
 しかし、全体では男性よりも女性のほうが、酒について友人と話す比率が高い。そこで話されているのは、新製品の情報にはじまり、どの酒を飲んだらおいしかったとか、食べ物との相性など難しい蘊蓄というよりも楽しみ追求のための情報交換という色彩が強い。
 考えてみれば、当たり前なのかもしれない。食べ物や身の回りのファッションのことなどを友人と話し合い、口コミとして伝播する力は、女性のほうが強い。男性のほうが酒について語り合うことが多いと思っていたのは、「男のほうが、酒の経験値が高く酒に詳しい」「女は酒をあまり飲まないから詳しくない」というステレオタイプな思いこみがあったからであろう。実際に今回の回答者のプロフィールをみても、女性の飲酒頻度は想像以上に高い(参考今回回答者の男女別の、週に三〜四日以上は飲んでいるという常飲層の比率は、男性七八%、女性六〇%である)。そう言えば、ワインスクールなどの受講生も女性のほうが多いと聞いたことがある。将来、酒の話題をリードするのは女性になるかもしれない。
【酒について話すこと】
アフリカには「バナナ酒」という世界一臭い酒があるらしい(真偽不明)とか、世界の珍酒について話すことがありますよ(naruo女性・二〇代)
友人とは飲み会の際に飲み屋さんで注文したカクテルやビールをもとにして、「そういえば最近この味のカクテル流行っているよね」と巷の流行について話します。家族とは、私が試しに買っていく新製品を飲み比べたりして、「次はこの商品をケースで買おう」などと話したりします。私はビールでも洋酒でも輸入物が好きなのですが、両親は国内物が好きなようで、よく意見が分かれてしまいます。たまの休みに、皆でお酒の意見を言い合うのは楽しいものです(Saori女性・二〇代)
第三のビールでどれがおいしいか等、けっこう熱く議論しますね(Haru男性・三〇代)
森伊蔵を定価で手に入れる方法についてとか、手ごろな値段で手に入る中で一番旨い酒は何か? など飲みながら語ることはあります(アッキー男性・三〇代)
焼酎バーやワインバーなどで、別々のものを頼んで、友人でまわしながら辛いとかスパイシーねとか話します。あとは上司の飲みに付き合うときは、上司のすすめる酒(ボトル焼酎)を飲みますが、うちの上司は酒通が多いので、解説付きでおいしい酒が飲めます(みなみ女性・三〇代)
苦手なお酒をどのようにしたらおいしく飲めるか、好きになれるか等を飲みながら語りますね(にゃーチョビももりんぺぺ女性・三〇代)
新商品の話が多いです。「あ、それ飲んだ」から始まって「どんな味」「どこのお店で買った」「どこなら試飲できる」「値段に対して味はどう」など、話は盛り上がります。最後にはみんなでオススメのお酒を持ち寄ろうとなるのが常です(らんこのシッポ女性・三〇代)
ビールの注ぎ方(グラスを傾けるのはNG)から始まり、泡の役割、上手な飲み方、更にはキリンのラベルに隠された「キ・リ・ン」の文字、ビールの製造年月日で売れてる銘柄がわかる(販売回転が良いので)…などなど。ビール雑学は飲み会で結構話題になります(タカ坊男性・四〇代)
日本酒の「味や香り」「杜氏が誰か」「コンテストの入賞はどこか」「添え・掛け・とめの仕込みで米が異なることを支持するか」「玉栄派・五百万石派」、素人がこだわりをのべながら飲みますよ。大事なのは、個人の好みを否定せず飲む事(春子の酒男性・四〇代)
缶チューハイの好きな友達と新製品がでるとどんな味だったか、今までのものとどう違うかとかよく話にでますよ(めぐおかあ女性・四〇代)
好きな酒の種類、さらにすすんで好みの銘柄、飲み方、つまみは何をとるかと始まると、なかなか終わりにならない(としくん男性・五〇代)
居酒屋で生まれ故郷の自慢話になるとだいたい日本酒から始まり、しばらく各県の銘酒の話題となります(ミッキー男性・五〇代)■

2008年07月実施