寒くなってくると、のれんをくぐり「おやじ、あったかいのをつけてくれ！」なんていう台詞に「大人」を感じを感じる人も多いと思う。しかし、吟醸酒の人気に火がついた十数年前から、燗酒は悪い酒の代名詞のようになった観があった。佳い酒は冷やして飲めという呪縛に囚われた人も多い。昨年から湯煎燗酒という燗酒ルネッサンスの活動が、業務用市場を中心に取り組まれはじめ、徐々に燗酒のうまさを再認識する人も増えてきたように感じる。
実際に燗酒をおいしく飲もうとするとそれなりの技術と手間が必要だ。家庭では飲みながらよい具合の燗酒を楽しみ続けることは至難の技、料飲店においても冷用と書かれた銘醸酒を燗につけてと注文しても断られる店もある。冒頭の台詞のように、気軽に頼んでちょうどよい具合の燗酒がどこでも飲めるように早くなって欲しいものである。
今回の調査結果では、ＹＥＳが五八％、ＮＯが三五％、そもそも日本酒を飲まないが七％であった。男女別では男性は好む人が六三％なのに対して女性は四九％に留まる。年齢別では、四〇代以下では好むが五〇％台であるが、五〇代では六三％、六〇代以上では七四％と上昇する。また飲酒頻度別でも週に三〜四日以上は飲む人では六七〜八％なのに対して、それ以下の層では五割を切っている。やはり燗酒を好むのは、男性・年長者・酒ヘビーユーザーという一般的なイメージは変わっていないようだ。
また、ＹＥＳと回答した方だけに具体的には何月頃から飲むことが多くなるかも聞いてみた。「年中通して主に燗酒を飲む」が一二％、以下、「一〇月〜」が二五％、「一一月〜」が三一％、「一二月〜」が三〇％、「一月以降」が二％であった。
【マスターＴの感想】
今回の回答者の意見を見る限り、燗酒は決して嫌われてはいない。温めて飲むと、気分が癒される、ゆっくりちびちびと飲める、味がまろやかになる等の利点があげられている。また、ひや酒よりも燗酒のほうが味がわかりやすいという意見が多かったのも意外だ。嫌いな理由は「匂い」「手間」にほぼ集約される。匂いが嫌いというのは仕方のないことだが、手間の問題で燗酒から遠ざかる人が多いのは残念である。そう言えば、かつてあった卓上燗つけ器も最近は見かけなくなった。
【ＹＥＳの感想や意見】
体調、気分、料理にあわせて飲めるので大好きですが、外食のときにワインやカクテルほど出してくれるお店がないことが多いです（桃：女性・二〇代）
ツーンとした香りは苦手なので、いつもぬる燗にしています。冷酒に比べて、程よい酔い加減が好きで体も心も温まるところが好きです（JUN：女性・三〇代）
燗酒を飲むと、心身ともに温かくなり、癒された感じがする（みーきん：男性・三〇代）
燗酒を飲みながら、皆とわいわい鍋をしたり卓を囲む雰囲気がよい。とても親密になれる気がする（やまる：女性・三〇代）
普段はビール党なのですが、主人とゆっくり語り合う時には燗酒を選びます。ちびちび飲めるところが好き（フライヒーロー：女性・三〇代）
私は熱い燗が好きです。ちびちびと肴にもこだわってゆっくりいただきます（もぐたん：女性・四〇代）
身体が温まってほどよい酔い心地になる事と肴を美味しく食べられるから（セレステ：男性・四〇代）
家族皆が寝静まった夜、深夜ラジオに耳を傾けながら、一人熱燗を飲むと身体の芯まで温まりリラックスできる（梅ちゃん：男性・四〇代）
熱燗は体がぽかぽかしてくるので好きです。適温は人肌だとよく聞きますが、これは加減がむずかしい（ハチドリ：女性・四〇代）
温めて飲める酒は「日本酒」くらいなのでそれを楽しむ。しかし、準備が面倒なので寒い時期にしかしない（ようじ１９０１：男性・五〇代）
あまり熱くない燗のお酒が好きです。肴の味を妨げずに、日本酒の香りが気分をよくしてくれます。但し残念なことは本当に美味しいお燗をつけるのがとても難しいことです。油断すると熱くなりすぎて香りが台無しになりまずくなってしまう（なお：男性・五〇代）
自宅では燗の手間もあり、寒い季節でもほとんど冷酒で飲みますが、外では燗酒を頼んでいます。香りが高まり、冬に最適の飲み物で体も心も温まります（agustin331：男性・六〇代以上）
燗の酒は大好きです。燗にすると味が深くなる。フルーツ香も薄くなるので味が鮮明になる。そして食中酒として肴を引き立たせてくれる。酔いが柔らかいのもよい（葦路：男性・六〇代以上）
【ＮＯの感想や意見】
私は年間通して冷です。熱燗は湯気が目にしみるし、本当においしいお酒でないとまずさが露骨にでるように思います（不良母：女性・三〇代）
においが鼻について苦手なのでお燗はしません。冬の熱いお鍋でも冷酒です（あおここ：女性・三〇代）
実は結構好きなのですが冬の寒い台所に立って温めるのが面倒なので、家ではたまーにしか飲みません。基本的にウチでは冷酒です（マスクメロン：女性・四〇代）
燗酒が飲みたくなるのは、友人と居酒屋で鍋をつついているときだけです。そのときは燗酒のほんわかと立ち上る香りが、とても好ましく感じられます。しかし、家では冷や酒しか飲みません（yacchan：男性・六〇代以上） ■
