外国産米容認派は三〇%

 清酒のことを日本酒と呼ぶことに誰も抵抗感はないだろう。それは、日本にいる限り、外国産の清酒を口にする機会がほとんどないからだ。しかし、日本酒の国際化はここ数年急速に進み、海外での日本酒人気は高く、アメリカ・オーストラリア・中国・ベトナム・韓国など清酒の生産をおこなう国の数も増えている。
 さすがに外国産の清酒も含めて日本酒とはまだ誰も呼んでいないが、輸入米を使用して日本でつくられる清酒は日本酒と呼べるのか。焼酎の場合には、麦やそばなどは輸入原料に頼っている部分が大きいがあまりそのことは争点にならない。しかし、醸造酒で「米」という日本人の琴線に触れる素材で、しかも「日本酒」と呼ばれている清酒の場合にはかなり事情は異なる。
 今回のアンケート結果では、全体では、どこの米を使おうが日本酒と呼んで構わないと回答した人は三〇%であった。属性別の特徴は二〇代では三八%、三〇代では三二%がYESと答えており、若いほうがこだわりは少ない。また、飲酒頻度別に見ると週に五日以上飲むというヘビードリンカーはYESが三四%と高くなっている。このあたりは、価格が安くなることへの期待感も込められているのであろう。
【マスターTの感想】
 お寄せいただいた意見を集約すると、「輸入米を使うことには反対しないが、その際には外国産米使用と明記して欲しい。また名称としては、日本酒以外の名前を使うべきである」というあたりになる。今の段階で、外国産の米を使った清酒に、積極的な期待感を持つ人は多くない。先日の美少年酒造の米偽装事件や汚染米混入事件の報道から、国産米と輸入ミニマムアクセス米では大きな価格差があることが知られた。清酒の価格を下げるために安価な輸入米を使うことは許容するが、情報の開示が必須だ。理由が価格差だけであるなら、現状の高率な関税のもとでは拡がる可能性は低いが、将来的には海外でも酒づくりに適した米の生産がおこなわれる可能性は低くない。そのときに備えた議論は不可欠だろう。
【YESの感想や意見】 
外国産米を使うことで日本酒の価格が安くなるなら、個人的には嬉しい。ただ、外国産米を使用したら、その旨を商品に明記するべきだとは思います(かんの:女性・三〇代)
料理酒には安い日本酒を使いたいので、外国産米の日本酒が販売されたら買うと思います(まゆどん:女性・三〇代)
外国産米よりひどい原料(酸味料や廃糖蜜など)を使っている日本酒が幾つもあるのだから今更という感は否めない。むしろ清酒の世界に新しい風が吹くのではないかと期待します(赤不動:男性・三〇代)
これからの日本経済は縮小して、所得も頭打ちになるのだから、安くしていかないと仕方あるまい。それに焼酎は外国の麦を使っていて何も問題があると聞いていません(ポンカス:男性・三〇代)
安全性が確実なら外国産でもかまわない。むしろ安い純米酒が増えるのであれば積極的に使うことを歓迎します(ほっぷ:男性・三〇代)
時代の流れに逆行して、かたくなな態度でいた事が日本酒の低迷に繋がったと思います。酒飲みとしては海外米の日本酒にも興味があります(しゅん:男性・三〇代)
用途によって原料を使い分けるのは、清酒に限らず、あらゆる製品でおこなわれていることです。問題は表示と区分だけでしょう(びわよし:男性・四〇代)
味噌、豆腐、うどん等にも外国産の原料が欠かせない今日、お酒だけは日本産米というわけにはいかないでしょう(G:男性・四〇代)
こだわりのある人は全て国産でつくる=割高。ミニマムアクセス米+アルファーでつくる=格安。選ぶのは消費者、そして利益のほしい生産者。要は、日本のお米安保の問題(Small Boat:男性・五〇代)
【NOの感想や意見】
「日本酒」と名乗る限りは日本産のお米を使ってほしいです。どうしても外国産米でお酒をつくると言うのなら、新ジャンルとして分けて欲しい(ごましお:女性・二〇代)
日本酒は米作りから仕込みまで未来に残してゆかなければならない伝統文化。単に安い酒を望むのであれば、アメリカ、中国でつくられている清酒を輸入すればよい(トム:男性・二〇代)
原価の点で輸入米をと考えるのも無理はないですが、多少価格を上げても、国産米でつくって欲しい(りぃりぃにゃんこ:女性・三〇代)
外国産の米でお酒をつくるのはかまわないが、日本酒は国産米使用に限ると法で定めてて欲しい(山田錦万歳:女性・四〇代)
国産米を使えば、規模の大小にかかわらず、メーカーと生産者や産地、消費者を巻き込んだつながりができると思う。そのつながりは、安全性の確保や消費拡大につながり、日本酒や酒米の生産振興につながると思う(酒米人:男性・四〇代)
安全・品質に問題がなければ、一概にダメとはしない。しかし、現状のミニマムアクセス米を使うことには反対(オニオン:男性・四〇代)
「食文化」は地域の中で相互に関連を持ちながら発展してきたもの。日本酒は、春の苗代作り・田植え・収穫・酒の仕込みといった一連の文化としてとらえるべきで、そこには祭祀や行事も含まれる。この観点からは、米を外国に依存するということは、文化の一部を外国に依存してしまうことになり、適切ではありません(TAD:男性・五〇代)   ■

2009年04月実施