僅差ながら産地重視派が上回る結果に

 一昔前までワインは、売場で産地別・価格帯別に並べるのが定番であった。ところが、新世界ワインが市場を席巻しはじめると、ワイン選びの手がかりが産地別から品種別に変わっていった。フランスのボルドーの赤とかではなく、カベルネソービニヨンやメルローという選択肢で選ぶ人が登場したことを意味する。複雑なうえに数も多い産地よりも、品種のほうがシンプルでわかりやすいから一定の支持を集めているのであろう。
 アンケートは、産地重視派が三二%、原料重視派が二四%、どちらともいえないが四四%であった。年代別には、六〇代以上が産地重視がもっとも高く三七%に達し、原料重視派は二〇代の二九%が最高である。男女別では、女性のほうが原料重視派が若干多くなる。
【マスターTの感想】
 アメリカを筆頭に新興ワイン国が導入した、産地名ではなくぶどう品種をメインにラベルに記載する新方式。確かに味のイメージは浮かびやすくワインは選びやすくなった。名前だけでおいしいワインと連想される伝統産地に対して、新興産地が競争軸を替えたいと考えることは理解できるし、フランスでも一部に品種名を記載することが許可されるようになってきたのだから、この方向が将来の主流になっていくのであろう。
 だが、この選び方は、なにかワインを無機質なものに近づけるような気がしてならない。実際には、同じ品種であっても産地や醸造方法によって味や香りは当然ながら異なる。有名なグローバル品種に人気が集中することで、産地特性が薄れて味覚が均質化していくことの弊害も指摘され始めている。今まで大事にしてきたテロワール(風土性)からワインを理解する方向へと揺り戻しが来る時期も近いのではなかろうか。
【産地派の感想や意見】
自分の好みの味などがだいたい産地でわかるからです。一時は甘めのドイツ産ワインが好きになり、癖のあるワインの産地はなかなか選ばなくなりました(シュン:男性・二〇代)
日本産のワインが好きで甲州産や岩の原ワインなどを選びます。輸入品は防腐剤がたくさん使われているような気がするのと、日本産のワインのほうが安くおいしいと感じるからです(ハセさんです:男性・三〇代)
ワインには疎いので、原料ではイメージが湧かない。一方、産地(国)についていてはさまざまなイメージが湧いてくる(HUNK:男性・三〇代)
ハンガリーに行ったときに出会った、貴腐ワインの味に衝撃を受けた。その土地ごとの風味が込められていてとても美味しかった。やはりワインは産地にこだわっていただくのが楽しみ(リカー:女性・三〇代)
何となく産地自体にロマンを感じるので重視しています。さまざまな国のワインを飲み比べることにも愉しさを感じている(酒仙旅人:男性・四〇代)
同じ原料であっても産地やつくり方によって味は大きく異なってしまうから。複数の品種を混醸して良さをだしている生産者を蔑ろにして原料別に並べる店はワインを軽視していると感じられる(赤不動:男性・四〇代)
単なるアルコール飲料ではなく、その瓶の中に、地理・歴史・風土といったものを包含する飲み物として選びたい。ある意味「いい加減」だが、選び方として、試行錯誤を許容するおおらかさを感じます。原料で味が決まるというのは、飲み手や売り手の傲慢さ以外の何物でもない(茄子茗荷:男性・五〇代)
産地によってぶどう品種はほぼ確定される。逆に原料を重視すると、産地はあちらこちらに分散されので味が異なる(ヒサミテ:男性・六〇代以上)
原料の違いについてはあまりわからない。産地なら、国別でなんとなく味の想像ができる(A:女性・二〇代)
葡萄の品種をみても味がどうなるのかわかりません。チリ産とかフランス産など好きな産地名なら想像しやすいです(まみ:女性・四〇代)
【原料派の感想や意見】
原料は、偽装がない限りごまかしがきかないため、期待値を裏切ることが少ない(うめっち:男性・二〇代)
いろいろ飲んでみて、葡萄の品種で選んだほうが、飲みたい味に近いことがわかったから(やまもー:女性・三〇代)
産地よりも、原料(ぶどう品種)のほうが味に与える影響が大きいから。ほとんど「カベルネ・ソーヴィニヨン」の赤ワインの中から選んでいるので、産地別に並べられても困る(ピッチマン:男性・四〇代)
最近、メルローにはまっているので、いろいろ試したくて産地は関係なく買ってます。お試しで高くないものばかり選ぶせいか、かなりすっきりしたメルローもあっておもしろいです(花信風:女性・五〇代)
そこまでワインに詳しくないので、味が想像しやすいほうがよい(うきママ:女性・二〇代)
産地より原料のほうがワインの味に影響があると考えているので、自分好みの味のワインを飲みたいため原料重視で選んでいます(なかし:女性・二〇代)
赤ワインの渋さより、白ワインの辛さのほうが好きなので、料理にあわせて白ワインを探します。その中で辛甘・産地・価格から選ぶので品種別のほうが便利。産地からだと全ワインから探す時間と手間とエネルギーが必要になります。売り場にソムリエでもいればいいんですけど。知識の乏しい消費者が簡単に選べるように売り場を考えているのでしょう(okugon:男性・四〇代)  ■

2010年04月実施