東北支援で日本酒を手にすることが増えた20代

 3月11日の東日本大震災から半年が経過した。被災された方々の悲しみや辛さは計り知れず、心より御見舞申し上げます。
 内外から多額の寄付が寄せられ、ボランティアに参加するなどさまざまな支援の輪が広がるなか、日本酒を飲んで被災地の酒蔵を応援しようという呼びかけをよく見るようになった。居酒屋や酒売場で共感して、東北の酒を手にした方も多数おられることだろう。ふだん日本酒を飲まない方がこの機に飲んだという話も聞く。
 そこで今回は「東日本大震災後に日本酒を飲むことが増えましたか?」と聞いてみた。答えは「YES」が3割(図表1)。長く日本酒が停滞していることを考えると、画期的な数値である。属性別で見ると、男性(28%)より女性(32%)が4ポイント高い。年代別では20代(38%)がもっとも高くなっているが、30代(24%)はもっとも低く、年齢が高くなるにつれて増加して60代以上では36%(図表2)。東北の酒を飲んで復興支援の呼びかけには若年層と高年齢層が敏感に反応したようである。
 「被災地(東北)のお酒を意図的に飲まれた方は、そのきっかけや気持ちを教えてください」と問うたところ、315名中130名が回答し、誰もがなんらかの役に立ちたい、応援したいとの言葉が述べられている。いくつか紹介しよう。
支援飲みは個人・居酒屋・酒販店へ

「震災をきっかけに東北について関心をもち、私の出来る範囲で役に立てればなと思って積極的に東北のお酒を購入しています」(女性20代)
「福島県の『奥の松(純米吟醸酒)』を毎日家で飲んでいます。放射能の風評被害にあわれているのではないかと思い、少しでもお力になりたい気持ちでいっぱいです」(女性40代)
「寄付するよりも産業の再生のためにはお金を回転させることが必要だと考えました。自分にできることはお酒を飲むことなので、東北のお酒を購入しました」(男性50代)
「どうせ飲むなら東北地方のお酒を飲んで、せめてもの復興支援をしたい」(男性60代以上)
 また、春先に流れた蔵元からのビデオメッセージの反響も大きい。
「東北の酒蔵会社の方の『お花見を自粛せず、東北のお酒をどんどん飲んで応援して下さい!』とのメッセージにはとても心を動かされました。小さな支援しか出来ないけど、”飲んで応援する”ことを継続しています」(女性30代)
「蔵元さんの言葉をテレビで聞き、とても感動しました。お酒好きな自分にとってはもっともしやすい復興支援なので、すぐに東北のお酒をネットで注文し、いろいろな銘酒を楽しんでいます」(女性20代)
 販売店や料飲店のキャンペーンがきっかけで飲み始めた人もいる。
「出張で高松へ行ったおり、居酒屋の主人が日本酒通で、震災復興のために東北の地酒を飲むキャンペーンをおこなっていたため、そこでいくつか飲んでみた」(男性30代)
「デパートで東北のものを購入しようという企画があって、日本酒をいろいろ買いました。新しいおいしいものに出会えてよかったです」(女性50代)
 酒販店を営む男性(50代)は、「酒屋ですので、東北〜北茨城の蔵の商品を棚の中で一括りにして、日本酒をアピールしました。清酒は3月以前の約4年間は前年比マイナスが続いていましたが、4月以降前年比を割らない月が出てきました。夏になっても、その動きは堅調です。『ガンバロー、日本』というスローガンが効いたのかもしれません。ウチ飲みが増えたことも関係しているかもしれません」と、清酒の回復傾向を示唆している。

今後も増えるという予想は4割

 「秋以降のあなたの日本酒の選び方がどうなると思うか教えてください」と聞いたところ、「今まで(震災以前)と特に変わらないと思う」が54%で半数を超えている。しかし「東北の酒を中心に日本酒を飲むことが少し増えると思う」が33%、「日本酒(産地を問わず)を飲むことが少し増えると思う」が10%で、合計4割強の人が日本酒を飲むことを増やそうとする意識がみられる。
 属性別では、性差はあまりないが、年代別では60代以上の人の4割強が「東北の酒を中心に日本酒を飲むことも少し増えると思う」と答えているのが目立つ。20代は「日本酒(産地を問わず)を飲むことが少し増えると思う」が2割で他年代に比べ高い。若いからこそ産地を問わずいろいろな酒を飲んでみるという可能性がうかがえる。また飲酒頻度が高い人ほど、東北の酒を中心に飲む機会が増えると考えている(図表3)。           ■

2011年08月実施