飲むお酒にこだわる人は七三%

 毎年おこなわれる忘年会。今年は程度の差はあれ、例年と趣きが異なることだろう。三月の東日本大震災、噴火や台風など相次いだ災害。普通に生きていられることへの感謝、復興に向けてがんばろうという思いがふとした瞬間に胸をよぎる。そんなときにみんなの気持ちをリラックスさせ、楽しませるために欠かせないのが酒である。
 今回は、「今年の忘年会で是非飲みたいとこだわる酒類はありますか?」と質問した。「YES」と回答したのは全体の七三%で、性・年代別には違いはほとんど見られない。ただし飲酒頻度別にみると、週に三〜四日のミドルユーザーでは九割が「YES」と高くなる。ときどきお酒を飲むという人にとっては、年に一度の忘年会という特別な機会を使って、何かこだわった酒を飲みたいというニーズが高いことをうかがわせる(図表1・2)。
 続いて、「YES」の人にそのこだわる酒類はどんな酒なのかを聞いたところ、「日本酒」が六二%と圧倒的に多かった。次は「ビール」で三〇%、以下「焼酎」一八%、「ワイン」一六%と続く。性・年代別には「日本酒」は二〇代が七四%ともっとも高いことも目をひく。「ワイン」では女性と三〇代に特に興味をもたれているようだ(図表3)。

憧れの酒を飲む場としての忘年会

 最後に、なぜ忘年会でそのお酒を飲みたいと思うのか、銘柄名や理由などを具体的に記述してもらい、分類・仕分けした(図表4)。理由としては、「めったに飲めないもの」、「おいしいもの」が上位を占める。
 「めったに飲めないもの」というのは年に一度くらい、自分への褒美や楽しみとして、入手しにくいレアものや、高額だからひとりでは飲みにくい、ハレの場だからこそ飲んでみたいお酒などで、どちらも選択理由としてはカテゴリーというよりも具体的な銘柄に依拠している部分が大きい。
「忘年会では越乃寒梅を飲むことにしています。ワインはセミドライの白。ビールはインディアンペールエール。この時だけは良いお酒を飲んで自分を労いたい」(女性六〇代以上)
「新潟の麒麟山をあんこう鍋で楽しみたいです。なかなか店舗で見かけない日本酒なので、忘年会用に蔵元からお取り寄せしたいと思います」(女性四〇代)
「地ビールはナショナルブランドのものより値段は高いがおいしいと思うのでこういう機会に。日本酒は個人的に好きな金稀(櫻正宗)や各地の評判が良い日本酒を飲んでみたい。焼酎はプレミアムものの森伊蔵、魔王を一度は飲んでみたい」(男性二〇代)
「日本酒なら万寿(久保田)、黒龍、雪中梅。焼酎なら森伊蔵、魔王、赤霧島。普段あまり飲めないお酒なので、こういう時に飲んでみたい」(男性五〇代)
「飲んだことはないのですが、一度ドンペリで大人の忘年会をしたいです」(女性四〇代)
「ナポレオンとか高価で特別な酒を飲むことで、天変地異で暗かった一年に別れを告げることができたらと思います」(男性四〇代)

酒の選択は相性や話題性から

 「おいしいもの」には、いつも飲んでいるものより味わいが深いもの、料理との相性で吟味するなどの意味が込められている。
「日頃は飲みすぎて翌朝がつらいので、日本酒を避けているが、忘年会のときぐらいおいしい日本酒、日本料理に合う飲みやすいものを飲みたい」(男性五〇代)
「味わいの深さで、久保田を選ぶ」(男性三〇代)
「鍋や温かいものには地酒の熱燗がおいしいから」(女性四〇代)
「ランブルスコ(発泡性赤ワイン)がおいしいからみんなに勧めたい」(女性二〇代)
 これら以下は「好きだから」、「復興支援」、「家では飲めない・ちょっと高額」などにまとめることができた。東北へのエールや、ふだんは家で飲まなくなった本格的なビールへの思いなどが伝わってくる。
「東北地方を応援したいから、奥の松、一ノ蔵を飲みたい」(男性三〇代)
「墨廼江、栗駒山、わしが國など、震災にも負けずに復興をしている宮城のお酒で、しかも、金賞をとったもの。地元宮城の復興に、お酒を通して貢献したい」(女性四〇代)
「酒好きの私は、東北の地酒を飲むことで支援できるかなと思います」(男性五〇代)
「森伊蔵、ドンペリは高くてちょっと手が出せないけれど、一度は飲んでみたいと思っています。忘年会にみんなでお金を出しあって少しずつ飲むのも、話題性もあっていいのではないかなと思っています」(女性四〇代)
「毎日、その他のビール類(発泡酒等)ばかり飲んでいるので、たまには、ヱビスビールやプレミアムモルツなどの本物を飲みたい」(男性六〇代以上)

忘年会は潜在需要開拓のチャンス

 ここ数年、飲食店での忘年会というと、飲み放題均一料金で二時間という形式のものが増えている。この方式は価格も安く時間も読めるので、幹事役の人間にとっては楽であり、お代り自由なので参加者の不満もたまりにくい。居酒屋で人数が多いケースなどはまずこの方式で予約している。しかし、今回のアンケートのようにアラカルトで酒を頼むと、一気に割高になる。
 一方で、家飲み(ホームパーティ)需要の拡大を受けて、忘年会も自宅でという流れも広がっているはずだ。そのときには幹事の采配ひとつで、今回のような酒類のチョイスも実現できる。二〇代の日本酒、三〇代のワインなど、こだわった酒を飲んでみたいという潜在需要は確実にある。後は誰がそのシーンに酒を届けるかにかかっている。    ■

2011年10月実施