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天然水の宝庫「熊本」のうまい酒〜メーカー編
 有明海に面して長い海岸線を持ち、阿蘇山の豊な名水が大地を潤す熊本は、海と山の幸に恵まれたところです。新鮮な魚介類、深い旨味の馬刺しやピリ辛の芥子れんこんは酒の肴にぴったり、香ばしい焦がしにんにくのはいった熊本ラーメンでの〆もいいものです。お酒も粒ぞろい。阿蘇の名水で仕込んだビールや清酒、熊本独自の赤酒、最近はシャルドネ種のワインがおいしいと評価が急上昇しています。そんな熊本の酒を旅してみましょう。

■阿蘇の天然水から生まれるビール
  まずはビールから。市内から無料シャトルバスに揺られてサントリー九州熊本工場に向かいます。この工場では『ザ・プレミアム・モルツ』や『阿蘇の天然水』をつくっています。
 今年、ここにおいしいビールを提供することに徹底的にこだわったビア・レストランがオープンしました。「ザ・プレミアム・モルツ タップバー/レストラン 阿蘇」です。小型のビール醸造設備もあってここでしか飲めないビールもあります。すぐに試したいところでしたが、せっかくここまで来たので工場を見学してから行くことにしました(もちろんお目当ては無料の試飲ビールです)。
 見学ツアーは試飲も含めて1時間ほどで、最初はビールの原料の解説です。阿蘇の山々から良質な水が湧くメカニズム、それを保全するための涵養林の保護活動に始まり、主原料である麦芽やホップについてわかりやすく説明されます。その後は製造工程順に、麦汁づくり、発酵、濾過、ボトリングを見学します。
 ひととおり見学が終わるとお待ちかねの試飲です(ウキウキ)。ビールサーバーの前に並ぶと、サービスの女性から「(グラスは)ワイングラスとタンブラーのどちらになさいますか」と聞かれました。あちこちのビール工場を見学しましたがこんな質問は初めてです。迷っていたら「ワイングラスは香りがたち、タンブラーはすっきりした味わいが楽しめます」とアドバイスしてくれました。 そのとおりワイングラスに2/3ほど注がれたビールは、顔を近づけるとホップの華やかな香りがパアッと広がりました。口きりいっぱいまで注がないことがポイントで、グラスの形状から中に香りが溜まって華やかさが際立つのだそうです。2杯目はタンブラーでいただきました。どちらもおいしいですが、グラスでこんなに印象が変わるものかとたいへん勉強になりました。

『ザ・プレミアム・モルツ』には良質なダイヤモンド麦芽を使用麦芽を破砕して煮沸、麦汁をとる阿蘇の地下水を守るためにさまざまな活動に取り組んでいるお楽しみの試飲。ていねいに注いだ『ザ・プレミアム・モルツ』をタンブラーで
ワイングラスで飲むと香りが立ち、ビールの表情が変わった『ザ・プレミアム・モルツ マスターズ・ドリーム』は専用のグラスで

■熊本の食材をふんだんに おいしいビールを追求したビア・レストラン
 工場の向かい側、広い芝生の広場に面して「ザ・プレミアム・モルツ タップバー/レストラン 阿蘇」があります。ここは『ザ・プレミアム・モルツ』『〃香るプレミアム』『〃黒』『〃マスターズ・ドリーム』のほかに、レストランの小さな醸造所でつくったオリジナルの『火の国アンバーエール』、プレミアムモルツ黒をランドルという機材によって風味を加えた『カフェラテ』を楽しめます。
 ビールを提供する温度にも細心の注意がはらわれ、5℃のビールに2℃の泡を入れる匠、8℃でワイングラスに注ぐ香るプレミアムなどなど、かなりのこだわりよう。
 まずはオリジナルの「火の国アンバーエール」を試してみました。透明で濃い色合いから濃厚な味わいをイメージしていましたが、予想に反して軽快で柔らかな口当たり。グラスが薄いので、指先がひんやりとしてビールを直に持っているような感じになります。
 「カフェラテ」は透明なコーヒーカップに注がれ、見た目はカフェラテのままです。こうばしいコーヒーが豊かに香りますが、飲んでみるとビールの味がしっかりとありました。
 そしてフード。できるだけ地元の食材を用いると言うとおり、定番の「ビアフリット」には、天草のキビナゴ、太刀魚の味醂干し、鯵の味醂干が使われていました。サラダや付け合せの野菜はもちろんパンの小麦もビーフも地元産。そしてポークは熊本のブランド肉という徹底ぶり。
 贅沢にスペースを使った落ち着いた雰囲気で、わざわざ足を運ぶ価値のあるビア・レストランでした。大人の時間を存分に楽しめます。
工場からの遊歩道は広い芝生の公園につながっていた自然に溶け込んだ「ザ・プレミアム・モルツ タップバー/レストラン 阿蘇」タップがずらりと並んだ本格的かつオシャレなカウンターレストランの一画に小さなビール醸造設備がある
輝く褐色がスマートなグラスでいっそう映える「火の国アンバーエール」力強い色合いの『ザ・プレミアム・モルツ黒』コーヒー豆をつかってつくったビアカフェラテ写真14 フードは地元の食材をふんだんに使ったものばかり


【サントリー九州熊本工場】
所在地:熊本県上益城郡嘉島町大字北甘木字八幡水478
TEL096-237-3860(電話受付時間:9:30〜17:00/休業日をのぞく)
休業日:年末年始・工場休業日(臨時休業あり)
http://www.suntory.co.jp/factory/kyushu-kumamoto/

【ザ・プレミアム・モルツ タップバー/レストラン 阿蘇】
所在地:サントリー九州熊本工場内
TEL:096−237−2280
営業時間 :月〜木 11:00〜17:30(ラストオーダー 16:30)
金〜日・祝日・祝前日 11:00〜22:00(ラストオーダー 21:00)
客席数 :194席※全席禁煙
定休日 :年末年始・工場休業日(臨時休業あり)
http://www.suntory.co.jp/factory/kyushu-kumamoto/restaurant/index.html
■江戸から続く肥後の赤酒
 さて、次は熊本市内に戻り当地ならではの「赤酒(あかざけ)」を訪ねましょう。この酒は熊本では年始の屠蘇酒として欠かせないものです。また、料理酒として評価が高く、全国の有名和食店で隠し味に使われています。
 赤酒が発達したのは江戸期のことです。当時は、設備や技術が未発達だったため、温かい熊本では醪が雑菌に汚染されやすく、清酒づくりには大きなリスクがありました。貴重な米を原料に使いながら、途中で腐らせてしまうなど許されません。藩主(肥後細川藩)は清酒づくりを規制し、代わりに水の割合を下げて濃くつくったうえ、途中で木の灰を加えて安全に発酵させる手法を奨励します。これが味醂に似た味わいの赤酒で、熊本では酒と言えば赤酒を指すようになります。
 明治期は熊本が赤酒から清酒に大転換した時代でした。自由に清酒をつくれるようになって、酒蔵は次々に清酒づくりに乗り出します。ところが技術も経験もないうえに温暖な気候で、おいしい酒がなかなかできません。そんななか現在の瑞鷹株式会社を創業した吉村太八氏は、敷地内に熊本県酒造研究所をつくり著名な酒造技術者を招聘して技術の向上を図りました。他の酒蔵も共に研鑽に励み、熊本県全体の酒づくりのレベルは飛躍的な向上を見せます。大正期になると熊本の酒は清酒コンクールで上位を独占、全国に名声をとどろかせ、熊本は銘醸地として広く知られるようになったのです。
 牽引した瑞鷹株式会社は、今も創業の地、熊本市の南部の川尻地区に酒蔵を構えています。昔ながらの瓦葺の本社屋からは、陸揚げ港としてにぎわった往時の川尻が偲ばれます。かつての街道は車2台が通れるほど、ぶらぶらと数分歩くと大正期に第2工場として建てられた東肥蔵に到着。ここには直営ショップの大正蔵があり、同社の酒をひととおり試飲することができます。清酒『瑞鷹』はもちろん、米や麦の本格焼酎、そして赤酒を試せます。実は戦時下で一時製造が途絶えた赤酒をいちはやく復活させたのが同社でした。清酒や焼酎の消費が伸びて、赤酒はふだんの酒としての用途を失いましたが、景品に屠蘇散を付けて屠蘇酒として利用するよう提案し、料理人に料理酒としての使用を勧めて、赤酒の新しい市場を開拓、伝統酒を新しい時代に繋ぎトップメーカーとなったのでした。
趣きのある瑞鷹の本社屋鉄筋コンクリートの工場から本社屋を見下ろす。瓦屋根が見事赤酒は清酒に比べて水の割合が半分。瑞鷹は琺瑯タンクで仕込む一升瓶で売られる赤酒。濃く淹れた紅茶のような褐色
東肥蔵にあるショップ「大正蔵」。隣接する「くまもと工芸会館」とつながっている東肥蔵にあるショップ「大正蔵」。隣接する「くまもと工芸会館」とつながっている

【瑞鷹株式会社】
〔川尻本蔵〕
所在地:熊本市南区川尻四丁目6番67号 TEL:096-357-9671
〔東肥蔵「大正蔵」〕
所在地:熊本市南区川尻一丁目3番72号  TEL:096-311-6275
http://www.zuiyo.co.jp/
■人気急上昇 熊本のシャルドネ 熊本ワイン
南欧風のゲストハウスには試飲カウンターと売店がある 「いま注目の日本ワインの産地のひとつは九州です。すばらしいシャルドネ種のワインが誕生しています」と述べたのは、ワインジャーナリストで『日本のワイナリーへ行こう』などの著作で知られる石井もと子さんです。ワインの産地のイメージがまったくなかった九州にも、大分、宮崎、そして熊本などに、本格的なワイナリーが誕生し、次々においしいワインが誕生していると言うのでした。
 それではと訪ねたのが熊本ワインです。ワイナリーは熊本市の郊外にある食品メーカーの工業団地「熊本フードパル」の一画にありました。ここには立派なゲストハウスと醸造設備があり、県内14か所の契約栽培農家が育てたブドウでワインをつくります。巨峰種やナイアガラ種の甘口ワインだけでなく、シャルドネ種の辛口白ワインやマスカット・ベーリーA種の赤ワインをつくり、日本ワインコンクールでも入賞実績があります。
 温かい熊本ならではの工夫もあるようでした。例えばフレッシュなブドウで仕込むために、気温の低い夜間にブドウを収穫し、冷蔵庫で保管してさらにブドウの温度を下げてからワインに仕込むそうです。こうしてリリースされた本格ワインは発売と同時に売り切れるほどの人気で、品薄状態が続いているのだとか。
 ゲストハウスでは主要なワインが試飲できます。せっかくなので入賞歴のあるシャルドネ種とカベルネ・ソーヴィニョン種のワインを試してみました。これはグラスで550円の有料試飲です。どちらも柔らかい口当たりながら凝縮感のある上々の出来ばえ、ワイン好きには試飲を強くおすすめします。
菊鹿地区のブドウで仕込んだ熊本ワインのフラッグシップ商品ショップにはワインやチーズのほか熊本県内の物産が並ぶステンレスタンクで仕込み一部は樫樽で貯蔵熟成させる本格ワインは数々の入賞歴を誇る
【熊本ワイン】
所在地:熊本市和泉町三ッ塚168番地17 TEL:096-275-2277
http://www.kumamotowine.co.jp/