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沖縄感動体験 泡盛改定貯蔵ダイビング
 いま沖縄の観光は国内外から人が押し寄せ絶好調です。沖縄が大好きで年に何度も訪沖する方が、皆さんの周りにもいらっしゃるのではないでしょうか。  それでも冬場はオフシーズン、この間の観光コンテンツを開発しようと企画されたのが「沖縄感動体験プログラム」です。沖縄各地の観光資源を生かした着地型の観光モデルを開発し、地元の人と交流して感動体験を積み、それを広く情報発信していくというもので、「インストラクターと回るゴルフラウンドレッスン3日間」「プロお勧めの絶景スポット撮影ツアー」「海の幸 陸の幸が豊かなまち 糸満市で、沖縄の食のルーツをめぐる旅」などおもしろそうなメニューが並んでいます。そのなかでも異彩を放つのが沖縄の伝統酒「泡盛」を軸にした「泡盛海底貯蔵ダイビング」です。2泊3日の盛りだくさんのプログラムをレポートします。

■海底貯蔵一年で10年古酒並の味わい
 泡盛には古くから熟成酒づくりの文化があります。「仕次ぎ」という独自の手法で、家宝として古酒を育ててきました。何年もかけて古酒をつくり、後世に引き継ぐ。そうして泡盛は、熟成酒づくりの知見と経験をもっとも豊富にもつ日本伝統の蒸溜酒となりました。
 「泡盛を海底で熟成させたらおいしくなるかな?」。海に囲まれた沖縄ですから、こんな発想が出てくるのも頷けますが、本当に試す人が出てきました。本島北部、本部町で蝶のテーマパークを運営する琉球城蝶々園です。地元の山川酒造の泡盛を1年間、水深5m〜10mの海底にP箱で貯蔵してみると、瓶はサンゴやフジツボが付着して何とも味わいのある姿になっていました。常に波にもまれていたせいでしょうか、専門家が利き酒すると10年古酒に近い熟成感と評価しました。どうして熟成が早く進むのか、メカニズムはわかりませんが海底貯蔵でおいしくなるのは確かなようです。
 これを人気のダイビングと組み合わせて観光プログラムにしたのが今回のツアーです。海に潜って自分でマイボトルを海底に運び、1年後に引き揚げて本人に送るのが目玉です。全国各地から集まった泡盛好きの男女が、まだ水温の上がらない2月の海に潜り、寒さに震えながら泡盛を沈めたのでした。
海底に自分の泡盛を運んでみる。実際の貯蔵はもっと安定した岩礁でおこなう海底に自分の泡盛を運んでみる。実際の貯蔵はもっと安定した岩礁でおこなう南国沖縄でも2月の海はまだ冷たい。ウェットスーツを着てダイビング南国沖縄でも2月の海はまだ冷たい。ウェットスーツを着てダイビング
■初日は泡盛ブレンド体験 まさひろ酒造(糸満市)
 集合場所の那覇空港から車で15分、最初のプログラムはまさひろ酒造での泡盛のブレンド体験でした。泡盛は蒸溜した酒をそのまま瓶詰するのではなく、複数の原酒をブレンドすることで同じ味わいになるよう調整します。新酒でも穀物感を残したものや、スッキリと軽やかに仕上げたものなど複数のタイプがあり、また熟成年数によって香味が変わります。さらに熟成容器に甕を使うかステンレスタンクを使うかでも変わってきます。
 泡盛の製法の説明を受けて工場を見学した後、いよいよブレンドして自分だけの泡盛をつくります。用意された原酒は、新酒が2つ、3年古酒、甕貯蔵古酒5年、同じく古酒10年、そして樫樽貯蔵10年の琥珀色の酒の五つでした。まずは、ひとつずつスポイトでプラカップに原酒を取り分けて味わいを確認します。次に複数の原酒を計量しながら混ぜて、味の変わり方を見て行きます。最後にキーにする原酒を選び、他の原酒のブレンド比率を考えて、1本分の酒に仕上げます。
 難しそうですが、味見を繰り返すうちに感覚が鈍って違いがわからなくなり、いい具合に酔いも回って、作業も気分もおおらかになるのでご心配なく。できたマイ泡盛は、愛着のあるおいしい一本になること間違いありません。そして、体験してよくわかったのは、味わい深い古酒ばかり使ってもおいしくなるとは限らないことと、樫樽に貯蔵した香気の強いものは、入れすぎると他の泡盛を覆い隠してしまうということでした。
 さらに最後に利き酒テストが待っていました。問題は全部で4問、@原料米の異なるもの、A新酒と古酒、Bタンク貯蔵古酒5年と甕貯蔵古酒15年、Cアルコール度数の違うものの3点です。全問正解しようと意気込んだのですが、2問しか当たりませんでした。どうやら私は、熟成したものと新酒の違いがわからないようです。こうしたテストは泡盛の香味の違いを真剣に探りますし、自分の感覚のクセが客観的にわかるので、観光プログラムとしても喜ばれるのではないでしょうか。
まさひろ酒造 http://www.masahiro.co.jp/

那覇空港の近くのまさひろ酒造でブレンド体験5種類の原酒を自分の好みでブレンドまさひろ酒造の工場見学では醪に櫂を入れ、蒸溜したての泡盛を試したまさひろ酒造の工場見学では醪に櫂を入れ、蒸溜したての泡盛を試した
まさひろ酒造の工場見学では醪に櫂を入れ、蒸溜したての泡盛を試した
■マイラベルを貼る 山川酒造(本部町)
 2日目、海底貯蔵ダイビングをする日の午前中は山川酒造を見学し、貯蔵する泡盛に自分の名前を書いたラベルを貼ります。後で保護フィルムを被せてドライヤーで加熱し、ぴっちりとラミネートしてできあがりです。
 山川酒造は「古酒の山川」として知られています。古酒は在庫(酒)が寝てしまうのでキャッシュフローが悪くなり、経営的な負担は小さくありません。戦後しばらくはどの蔵も古酒をつくる余裕はなかったのですが、いち早く古酒づくりを再開しました。いま同社が保有する一番古いものは49年ものです。「来年はちょうど50年になるので記念の商品を発売するつもりです」とは山川宗克社長の弁。
 また、前日に訪問したまさひろ酒造の工場よりも小規模で、設備も手作業を多く残し、機材のサイズも小さいものが多く使われていました。規模の異なる工場を見比べることは、泡盛の理解をさらに深めることになるでしょう。
山川酒造 http://www.yamakawa-shuzo.jp/
古酒で知られる山川酒造ステンレスタンクだけでなく伝統的な甕で貯蔵する山川社長が自ら蔵を案内海底貯蔵する瓶に自分の名前を書いたラベルを貼り防水ラミネート
本部町の市場で晩の宴会の買い出し。マグロやカツオが安い
■酒肴にグラス そしてカチャーシ
 無事にダイビングを終えた2日目の晩は、地元の方との交流会を兼ねたカチャーシ教室でした。カチャーシは頭上にあげた手を左右に振りながら、三線に合わせて踊る沖縄の舞踊です。
 本部町はカツオ漁で栄えた町で、かつては離島への船の発着場港としてたいへん賑わいました。鰹節づくりは今も町を代表する産業です。晩の交流会の前にはもとぶ町営市場を訪ね、市場のガイド役の方の案内で精肉店や鮮魚店の方々と交流します。ちょうど旧正月だったので沖縄の豚を使った伝統的な正月料理のことなどをうかがうことができました。鰹や鮪の刺し盛は500円〜1000円と格安、皆で購入して交流会に持ち込んだのでした。
 この泡盛海底貯蔵ダイビングツアーは、隅から隅まで泡盛尽くし。琉球ガラスの製作体験工房では、交流会で泡盛を飲むマイグラスをつくりました。昼食の沖縄そばでは、泡盛に島唐辛子を入れただけのピリ辛調味料「コーレグース」を解説、本部町特産の鰹でつくるアンダンスー(肉みそ:肉と味噌と砂糖をよく炒め合わせた舐め味噌)づくり体験は、泡盛によく合うおつまみという位置づけです。
 このツアーのターゲットは酒好きでダイビング好きとニッチになりそうですが、沖縄と泡盛が深く沁みる思い出をつくる着地型プログラムとして、一定の支持を得るのではないでしょうか。旅の最後は一年後の海底貯蔵酒の到着。忘れた頃にやってきて、旅の思い出とともにたっぷり味わえそうです。

1年間の海底貯蔵で瓶にはサンゴや貝がこんなにつく飲んで食べて、みんなでカチャーシを踊る飲んで食べて、みんなでカチャーシを踊る