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昨年10月に「バーテンダー世界大会(World Cocktail Championships Tokyo2016)」が、20年ぶりに日本で開催され、世界63か国から、予選を勝ち抜いたバーテンダー約100人が帝国ホテル(東京都中央区)で腕を競いました。優勝したのはショートカクテル部門に出場した日本代表の坪倉健児さんです。英語でのプレゼンテーションも笑顔でこなし、他の部門のチャンピオンたちを抑えてみごとな総合優勝です。坪倉さんが経営するバー・ロッキングチェア(京都市)を訪ね、次の目標をお聞きしました。
■若い人が入ってくる業界へ
−− WEBサイトで拝見していましたが、昔ながらの京都の町家に、オーセンティックバーがよく馴染んでいますね。17時から営業されているそうですが、バーとしては開店時間がとても早いのではないでしょうか?
坪倉 ええ、夕方は店の坪庭がとてもきれいに見えるのと、食事の前に軽くバーで飲んでから出かけるアペリティフを楽しんで欲しいと思ったので17時開店にしました。
−− アペリティフはいいですね。でも営業時間が長いと店側はたいへんでしょう。
坪倉 最初は予想できなかったのですが、早い時間に来ていただけるようになると掃除や準備が思ったよりもたいへんで、3時だった閉店時間を一時間早めました。バーという職業の認知度も高めたいと思っているので、社会保険も整備し、若い人に入ってきてもらえるように努力しています。
−− バーテンダーは技能職で、職人の側面が強いですから、一般の会社員のルールは当てはめにくいのではないでしょうか。
坪倉 そうなのですけれど、若い世代がバーの世界に入りやすくするには、何とかしないといけないという危機感はあります。現在、自分の店では、国内外への研修制度を設けたり、カクテルづくりの練習で使うお酒を提供したり、と、向上心を持てるような福利厚生の仕組みをつくり、意識を変えようと取り組んでいます。
−− 時代ですね。今のバーテンダーの方々は、そんな風に考えているのですか?
坪倉 試行錯誤しつつ自分で考えてトライしていることなので、あまり一般的ではないかもしれませんが、私の周りには同じような考えの方も多いです。
−− ホームページで常にバーテンダーを募集していらっしゃいます。
坪倉 はい。いつも欠員があるわけではないのですけれど、問い合わせはたくさんいただきます。本気の方からイメージだけで電話してくる方までさまざまですが、この人は見込みがありそうだなと思うと『〇〇さんが募集しているから、一度飲みに行ってみたら?』と促します。やる気のある人には、バーテンダーという職業に就いてほしいですから。
長い目で見ると自分の店のスタッフに教えるだけではだめだと思っています。バーに関心のある人たちに来てもらって、身近な人たちと一緒に、バーの世界を盛り上げていきたいです。それが地域に広がり、日本全体に広がって、世界に通用するバー文化ができると思います。
■世界で問われるプレゼンの力
−− 坪倉さんは昨年のバーテンダー世界大会で優勝され、世界に通用することを示しました。各部門の優勝者が競うスーパーファイナルを拝見しましたが、壇上でカクテルをつくっている最中に審査員が英語で質問をして、バーテンダーたちが答えながらカクテルをつくるのに驚きました。国内のコンテストでは競技者が黙々とつくります。ショー的な感じが強く、こんなに違うのかと。
坪倉 日本の大会とはすこし感じが違ったかもしれませんね。最近の世界大会の流れとしては、技術とともにプレゼンテーション力にも比重が多くかかってきているのは事実です。特に昨年の世界大会は公用語が英語で、最後の舞台ではプレゼンテーションをしながらの質疑応答とメイキングという、日本人にとっては少しハードルが高いものでした。
なので、大会に向けて英語の先生と一緒に想定問答集を考えて、こういう質問が来たらこの答え、あれならこれという具合に全部覚えました。スーパーファイナルの時には、最初の質問が「東京に2〜3日いるのだけど観光するならどこがいいですか?」というものでした。自分が京都なので「京都に行くなら」という質問の答えは用意しましたが想定外でした。後からあの質問の意味を考えてみて、審査員はふだんの接客を見ようとしたのではないかと思いました。優勝者のタイトルは「ワールド・バーテンダー・オブ・ザ・イヤー」です。カクテルではなくてバーテンダーのベスト。笑顔でやり取りし、カクテルづくりに忙しくて答えていられなければ「後でお答えしますね」と返しておくといったようなことです。
スーパーファイナルの時は、最後だと思ったら不思議と緊張しませんでした。そこにあの質問が来たので、ふだんの営業の時のような気分になってリラックスできました。審査員はあの場ではカクテルそのものについて聞こうとは思っていなかったと思います。
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