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東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2019は、日本で初めて開催されたウイスキーとスピリッツのコンテストです。いちばんの特徴は審査員がすべて日本人であること。6月8日に表彰式を終えた実行委員長の土屋守さん(ウイスキー文化研究所代表)に、第一回目の手ごたえとこれからの展望をお聞きしました。
■最良のテイスティング環境を
−− 日本初の洋酒コンテストを無事に終えて、ほっとされたところと思います。昨年の8月に開催を発表して以来、審査会の準備、結果発表、表彰式の開催と忙殺されていたこととお察しいたします。
土屋 おっしゃるとおりです。実際には3月に実施を決めて動き出しましたから、1年以上かかっています。審査会がたいへんなことは覚悟していましたが、審査会が終われば大方おしまいと思っていたら、その後のほうが大変でスタッフがほんとうに頑張ってくれました。
−− 私どもも清酒のコンテストを運営しているのでよくわかります。審査会は全体から見るとごく一部で、コンテストの運営は膨大な事務作業の塊です。特に初年度はすべて一からつくらなければならないので、何かが進むたびに新しい文書が必要になり、進捗を確認する事務が出てきます。
土屋 何でもやってみないとわかりませんね。9割がたは事務作業だったように思います。
−− 審査会を取材して最初に思ったのが、大量のテイスティンググラスをどこから調達して、使った後の洗浄はどうされたのだろうということでした。もちろん素晴らしい審査員が集まったことやたくさんの運営スタッフがサポートされていることも気になりましたが、コンテストを運営しているからでしょうか、その辺に目が行ってしまいました(笑)。
土屋 そうでしたか。私どもはずっとウイスキーの資格制度をおこなってきましたから、テイスティングの条件については厳しく考えています。われわれが推奨しているグラスを使う以外ありません。レンタル品もないのでコンテスト用に4000個を新たに購入しました。事務所にはとても収まりきらず、そのために別に倉庫を借りることになりました。
−− なるほど。会場は一般の会議室でしたがシンクはあったのでしょうか? 蒸溜酒はオイリーなものや臭いの強いものがあるので、水で流しただけではグラスに残ってしまいます。洗剤も強い香りのないないものにしなければなりません。
土屋 おっしゃるとおり洗浄にも細心の注意が必要です。女性の審査員もいるのでグラスの縁に口紅が残ることもあり、そういうものは審査には使えません。幸いなことにしっかりしたシンクが2台あったので、スムーズに洗浄できました。円滑に回せたのは、飲食業で仕事をしている方がサポートスタッフに多かったこともあったと思います。グラスを洗うのに慣れていらして、2日目の審査会が終わった時にはすべてのグラスが洗い終っていました。
■洋酒の専門家180人が集結
−− 審査員はどのように募集されたのでしょうか? 全国から約180人が参加されましたが。
土屋 最初は私どもウイスキー文化研究所が運営している「ウイスキーコニサー資格」の上位資格取得者や、著名なバーテンダー、洋酒の酒造技術者などおよそ250人に依頼しました。どれくらいの方に引き受けてもらえるか不安でしたが、続々と「やらせて欲しい」という声が戻り、ほぼ一次募集だけで固まりました。
−− 審査チームの組み合わせはどのように?
土屋 ウイスキーが得意な人たち、バーテンダーだけ、酒販店だけなど、いろいろ組み合わせを試しました。各チームにチェアマンを決めて、チームの進行を管理させます。大事な職務ですからどなたにチェアマンになってもらうかも悩ましいところで、チームの編成は複雑なパズルを解くようでした。
−− 審査員を日本人だけにする理由を、さまざまな国のウイスキーを飲んでいて、深く幅広い知識をもっている人たちが大勢いる、こんな国はほかにないとおっしゃっていました。
土屋 はい。ほかでは考えられません。ジャパニーズはもちろん、スコッチもバーボンもアイリッシュも普通にあるというのは日本だけです。しかもバーテンダーや一般の愛好家のウイスキーの知識や経験は豊富です。唯一、テイスティングした酒を評価して、点数をつける経験だけがない。これを積めば、日本のウイスキーの文化はぐんと厚みを増すはずです。自分がウイスキーのコンテストの審査員をやった時に、普段テイスティングするのとは別の驚きや感動がありました。自分の評価を点数にすることで見えてくることがあります。一人でも多くの人に同じ経験させたいと思ったので、最初から100人、200人という規模の審査員にすることを決めていました。20〜30人というのはありえなかった。
−− コンテストには審査員の教育機会という側面が確かにあると思います。フランスで現地のソムリエ達が審査する清酒のコンテストを見ていると、審査することはその酒と真剣に向き合うということで、評価後に審査チーム内で意見を交換して、清酒の経験値をどんどん高めているのを感じます。
土屋 今回のコンテストでも審査をしながらメンバーどうしで協議するグループがありました。運営サイドから評価後にチーム内で意見を交換するように特に指示はしませんでしたが、一番盛り上がったチームは酒販店の方が多かったところで、何番はすごくいいから絶対に仕入れるとか、この酒をあの店に提案したいとか、話が膨らんでいったようです。おもしろかったのは、評価が終わった後で商品をオープンにした時で、自分が高得点をつけた商品を見て仰天する。ふだん自分がどれだけブランドに引っ張られてテイスティングしているかが見えたのだと思います。
−− 洋酒の審査では審査の後で商品をオープンにするのですか?
土屋 私の経験ではオープンにすることが多いように思います。欧米の審査会ではそこからチーム内で意見の交換をするので、見方が立体的になります。今回の反省点の一つは、こうしたディスカッションの時間を十分に取れなかったことです。次回は審査日を3日間にして、時間にゆとりをもって進めようと考えています。
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