|
|
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
■
|
|
|
|
|
|
|
■最高傑作2016年ヴィンテージ
−− 帰国されたとお聞きして、本日はフランスでの16年間のご経験のなかから特に印象に残っていることをお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
サントリーが1983年に荒廃していたシャトー ラグランジュを買収してから37年、グランクリュ第3級にふさわしい名声を取り戻しました。椎名さんはその過程の後半を指揮されたわけですけれど、特に印象に残っていることを3つ挙げて欲しいと言われたら、何をお選びになりますか?
椎名 ラグランジュでの仕事は毎日が農業なので、1日として同じ日はなく、印象に残ることばかりですが、あえて3つと言われたら最初に挙げたいのは2016年のヴィンテージです。ラグランジュが品質を追求し続けてきたなかで最高傑作のひとつになった、それをスタッフが一丸となってやり遂げたということを一番に挙げます。
2つ目は2016年のような素晴らしいワインを生み出すために続けてきた一連の取り組みです。2008年以降、5年くらいかけて発酵タンクの小型化を進めました。ラグランジュのブドウ畑は区画が100以上に細かく分かれています。収穫したブドウを区画ごとに仕込むため、小さく分かれたタンクが必要でした。そして2009年に他に先駆けて導入した光学式選果機も強力な武器になりました。良質なブドウをスピーディーに選別できるので、収穫をぎりぎりまで待てるようになったのです。
2016年はカベルネ・ソーヴィニョンの収穫を10月17日まで待ちました。他のワイナリーはすでに収穫を終えていましたが、あのタイミングまで待つことが必要でした。それを可能にしたのは、この一連の取り組みがあったからです。最高の品質を追求できる体制づくりを二番目にあげたいです。
−− 今もさらに品質を高めるための工夫や投資も続けていらっしゃるのでしょうね。
椎名 はい。品質の向上に完成形はありません。気候も変わりますし、時代も変わっていく。優れた生産設備を活用しながら、畑でも、そして醸造でも常により良いものづくりを追求しています。
−− 良質なワインを生み出す体制が整い、2016年のような素晴らしいワインができる確率も高くなっていると思って良いでしょうか。
椎名 そう言えると思います。2018年、そして2019年も2016年に匹敵するものになりました。2018年、2019年が良い年だったというだけでなく、これまで積み重ねてきたものの成果です。
また、1983年に買収してから我々が植えたブドウの樹齢が、セカンドで出すワインも含めて平均30年を超えてきています。地道な作業の蓄積がもたらした、健全で樹齢の高い畑は大きな財産で、ブドウの質も上がり、ワインの品質を向上させるでしょう。
■自然の脅威、2017年の大霜害
−− さて、3つ目は何になりますか?
椎名 2017年の大霜害です。2017年4月27日の早朝に-5℃の大寒波が襲い、前日まで青々としていた畑が一夜にして茶色に変わってしまいました。あの光景を目の前にした時の驚き・・・・・・、自然の怖さを実感しました。
−− 5月近くでその気温は、ふだん暖かいボルドーでそんなに冷えるのかと思います。
椎名 北緯44度で網走と同じくらいの緯度ですから、寒暖の差がとても大きいのです。その被害のなかでも収穫に向けて懸命に対策を講じました。重要なのは霜でダメージを受けた木とそうでない木を識別できるようにすることです。霜にやられた芽は、その付け根から脇芽を吹いて伸び、実をつけます。ブドウが色づく前は見分けられるのですが、収穫期になると霜にやられた木がわからなくなってしまい、熟度の違う実を分別できません。そのため色づくタイミングで、全体の約1/4にあたる25万本の木に一本一本、カラースプレーでマーキングして、収穫のタイミングをずらしました。
霜害があったので2017年は一般的に難しい年と言われます。けれども、冷気は低いところに溜まるので丘の上の畑は被害が軽微でした。シャトーとして出すワインのブドウは水はけのよい丘の上の畑で、夏の気候に恵まれたこともありブドウの質は上々、シャトーものに関して我々はとても良い出来だと評価しています。ヴィンテージのイメージから値段も手ごろで、お買い得だと思います。
|
|
|
|
|
本サイトの画像及び文章その他一切のデータの無断使用・転載を禁じます。
copyright(c)1997-2004 Sakebunka Institute,Inc all rights reserved |