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近年、日本でも人気急上昇中のオリーブ。オリーブオイルは家庭でもよく使われるようになった。鉢植えで楽しんだり、庭に植えて大きく育てたり、さまざまな品種をコレクションする人もいる。岡井路子さんは日本でのオリーブの普及に尽力する第一人者だ。国内外のオリーブの産地を駆け回り、園芸店でワークショップを開き、NHKの園芸番組に出演、これまでにオリーブの本を何冊も出版した。今回は岡井さんから直々にオリーブの魅力をお聞かせいただいた。
■ワインとオリーブはお友達
−− お酒はワインがお好きだそうですね。
岡井 詳しくはありませんがワインは好きです。フランスに留学経験のあるワイン好きな友人の影響で、ワインショップやソムリエの方といろいろなワインを飲んだ時期がありました。これが好き、あれがおいしいと言っていたら、ソムリエの方があなたの好みはブルゴーニュですねと。ブルゴーニュを選んでおけば、好みを外しませんよと教えてくれました。
−− イタリアのワイナリーには必ずオリーブの木もあります。栽培環境が似ているんだとワイナリーの方が言っていました。
岡井 ヨーロッパのお金持ちはワイナリーとオリーブを両方やる方が多いんです。ビジネスではなくて自分たち用にいいものをつくるという感じです。去年、知り合いのショップでポルトガルのオリーブオイルの生産者から、うちのワインも売ってみないかと誘われてワインを輸入し始めました。
−− その担当の方はワインにも詳しい?
岡井 それが全然。でも、詳しいお客さんはワインの専門店に行くので、いいんだと思います。オリーブオイル好きな方に、「とってもおいしいオリーブオイルをつくる生産者のワインですよ」とか「ふだんのご飯にもおいしいワインですよ」と、自分の言葉で伝えていけば、共感してくれる方はいますから。
■オリーブにもたくさんの品種
−− オリーブオイルは1本 500円から 5000円くらいまで幅があって種類も豊富です。何が違うので
しょうか?
岡井 ワインと同じように品種と産地は影響します。オリーブにもオヒブランカ、カラマタ、ミッション、ルッカ、アスコラーナ、カロレアなどさまざまな品種があって、葉の形や枝ぶり、実の大きさや形が違いますし、果肉の厚さや固さ、収量の多寡などもバラエティに富んでいます。味もスパイシーだったりマイルドだったり。同じ品種でも産地によって変わりますし、さらに収穫時期と搾り方で変わる。オリーブの実は若い頃は青いのですが熟すと黒くなります。青いうちは苦くて、黒くなるにつれてそれがマイルドになります。
−− ということは若いうちに搾ると苦みが強く、熟すとマイルドになるのかな?
岡井 一般的な傾向はそうですが、どのタイミングで収穫するか、いかに酸化させずに搾るかがポイントで、おいしいオリーブオイルの生産者のところには必ず頑固なオイルメーカーがいます。その典型のようなトルコの生産者のところに毎年 11月に行って、収穫時期の異なるものを 15点くらい比較して、好みのものを選んできます。
生活に寄り添う長寿の木
−− 初めてオリーブの木を買う時はどんなことに気をつけたらいいですか?
岡井 自分用なのかプレゼントなのか、庭に植えるのか鉢植えにするのかなど、総合的に考えて一本に決めるのですけれど、オリーブは長寿なので慎重に選んでください。数百年は当たり前で、千年を超えるものも珍しくありません。実を収穫したいなら秋に実のついた状態を見て選ぶのがいい。園芸店には仕入れの関係でオリーブが豊富な日とそうでない日がありますから、仕入れサイクルも確認しておいたほうがいいです。
−− 植えてみると意外と手はかかりませんね。
岡井 もともと厳しい環境でも生育する強い木ですからね。でも剪定はしてあげてください。木は剪定だけは自分でできないので。枝を落とすのが怖いから、しない理由をつくってやらない人が多いのですけれど、余計な枝は切ってきれいな樹形にしてあげてください。どの枝にも陽が当たるように整理してあげると、オリーブが生き生きしてきます。落とした枝はリースにして飾ったり、葉を煎じてお茶にして飲んだり、いろいろな使い道があります。オリーブはイメージもよく平和の象徴でもあるので、ドライフラワーの花材としても人気、いいお値段で取引されています。
−− 平和の象徴とおっしゃいましたが、地中海地域の人にとってオリーブは特別な木と聞きます。
岡井 ずっと彼らの生活に寄り添ってきた特別な存在ですね。オイルも搾れるし、実を塩に漬けて保存食にする。オイルや葉を薬代わりにも使います。日本の梅干しを漬ける感覚に近いでしょうか。お金持ちの食卓にもオリーブが必ずあって、貧乏な人のお弁当にも入っている。トルコの田舎で大きなタバコ畑のなかに、一本立派なオリーブの木がありました。どうして一本だけなんだろうと思っていたら、タバコの葉を収穫する人たちの憩いの場なんです。日向での重労働の合間にオリーブの木陰で休憩する。「私はここで子供を産んで、またすぐに仕事したのよ」なんて言う方もいるくらいで、暮らしにしっかりと根付いてきた木なのだと思いました。
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