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『スナック研究序説―日本の夜の公共圏』という本が話題になっている。著者は首都大学東京法学部の谷口功一教授で、スナック研究会という組織を立ち上げて行った研究成果をまとめたものだ。夜の公共圏とは、スナックと常連客達によって作られる関係性が、昼間社会の人間関係とは異なる別のコミュニティをつくりだす公共的な装置になっているという考えから生まれた。著者の谷口氏にこれからのスナックのあり方をお聞きする。
■スナックは日本独自の文化
谷口 はじめは個人的な関心からスナックについて調べ始めました。学問的に研究するにはひとりでは限界だと感じていたところに、サントリー文化財団の研究プロジェクト助成に採択されて、専門分野をもった方々に集まってもらい二年間の研究会を経て『スナック研究序説―日本の夜の公共圏』としてまとめました。名店紹介ではない法律や社会学の観点からの研究書です。ナイトクラブでもダンスホールでも食事処でもなく、酒と軽食とカラオケとトークで客をもてなすスナックは日本だけです。これだけ隆盛した背景には、最近話題になっているナイトエコノミー、つまり深夜営業と風俗営業をどうするかに対する法規制が昭和後期に生まれたことが関わっています。風俗営業店の深夜営業を規制する一方で、夜中にも酒を介し楽しむ場所が必要とされていたのでしょう。
── 若い人からするとスナックは昭和の時代のお店です。一昨年大ヒットした映画『君の名は』で、コンビニもカフェもない田舎町なのにスナックは二軒あると高校生が嘆くほど日本中に浸透しています。
谷口 この研究会をはじめた2015年には減りつつあるとはいえ10万軒以上ありました。商業統計ではスナックだけの軒数はわからないので、NTTの『タウンページ』のスナックという業種を合計しました。知らない人にスナックを説明するとなると、「ママがいて風俗営業ではなく深夜営業で許可をとっている酒類を提供するお店」とでも言いましょうか。カウンターがあってカラオケがあって、ボトルで酒をとって、客単価は一回につき3000円程度といえばイメージできますかね。カウンターを挟んでの対応で、隣りに座って接客することがないのがクラブやキャバクラとの違いです。
なぜそんな細かいサービスに触れるかといえば、そこが風俗営業との境界になっているからです。接客する店は風俗営業の許可が必要です。しかし、風俗営業は12時までしか営業できません。今の風俗営業法が施行された昭和59年にスナックはもっと遅くまで営業していましたから、深夜業を選択しました。その結果、スナックでは隣席に座るなど接客行為ができなくなりました。
■風営法で確立した今のスナックスタイル
── 深夜業と風俗営業は両方はできないのですね?
谷口 兼業はできません。銀座のクラブみたいな店はみんな風俗営業店ですから夜の12時には店を閉めて、お店の女性やお客さんはその後カラオケのあるスナックへ流れます。そのあたりの事情は東京も地方も一緒です。
── そもそもスナックという料飲形態はいつ頃からあったのですか?
谷口 スナックが爆発的に増えたのは昭和40年代(40〜50年前)からです。現在に至るまでほとんどが個人営業で大規模店はほぼありません。一代限りでほとんど廃業されるようです。経営者になるよりも大きな店で売れっ子のホステスとして働く方が実入りも多いようです。
そこでスナックのことは今のうちに記録を残さないと、話を聞くことさえできなくなると思いスナック行脚をはじめました。ちょうど私も年齢的にスナック世代にさしかかったというのもありました。
── 確かに20代がスナックの常連というイメージはないですね。谷口先生はどうしてスナックに関心をもたれたのですか?
谷口 私の場合は環境の影響が大きいです。実家は繁華街の真ん中の病院です。父は毎晩のように地元の人とスナックに行って飲んでいましたから、大人になったらそういうところに出入りするものだと思っていました。同級生の親で飲食店をしている人もいたので、水商売を身近に知って育ちました。今でも帰省すると父も通っていたスナックに顔を出すことがありますよ。
── ということは、学生時代からスナックに通ったりしたのですか?
谷口 大学生の頃はお金もありませんから居酒屋です。酒好きの友人と珍しい酒の飲めるバーへ何回か行ったくらいです。30代に住んでいた世田谷で近くによいスナックはないかなと探したのがはじまりでした。しかし、世田谷はまわりがどんどん変わっていく時代でしたから、私のイメージする長く街の中に根づいているスナックに出会うことはありませんでした。東京にはそういうスナックは残っていないのかなと思いました。
── そうですね。東京は単身者など入れ替わりも激しいですし、飲食店も流行の業態を追ってどんどん入れ替わりますね。
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